DS301にSX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGT ミニ・ベースのクーペたち 後編

公開 : 2022.01.30 07:07

フォードGT40を縮小したかのような印象

タイヤは確かに頼りなく見えるものの、前後の重量配分は48:52と良好。爽快な操縦性を備えている。カーペンターはサスペンションの改良と設定に大きな時間を費やしており、オリジナルのミニに通じる、跳ねるような乗り心地も楽しめる。

シフト・リンケージは、ドライバーの右側からギアボックスまで長く伸びているが、変速感が心地良い。フォードGT40を縮小したかのような、ユニパワーGTの印象を一層高めている。

ユニパワーGT Mk1(1966年/英国仕様)
ユニパワーGT Mk1(1966年/英国仕様)

アクセルペダルへ力を込めると、美しく小さなミドシップ・ミニが、75台しか作られなかったという事実に疑問を持たざるを得ない。数千台は作られても良かったのでは、と感じさせる仕上がりだ。

ユニパワーGTは、成功を掴める実力を備えていたかもしれない。しかし、会社の経営は思うように進まず、1968年にレーシングドライバーのピアーズ・ウェルド・フォレスター氏へ事業が売却された。

設備の整ったワークショップでユニパワーGT Mk2が開発され、1969年に発表。出だしは順調で、彼はイタリア・シチリア島で開催されていた公道レース、タルガ・フローリオを目指す。ところが、レース直前でクラッシュしてしまう。

その1か月後には、ル・マン24時間レースのミュルザンヌ・ストレートで225km/hを達成するが、こちらもリタイヤ。ユニパワーGT Mk2に多大な資金を投入したウェルド・フォレスターだったが、年内に生産を終了してしまった。運は味方しなかった。

クラシック・ミニへ抱いた大きな夢

高度にチューニングされたロードカーから、ル・マン24時間レース参戦マシンまで、今回は4台のモディファイド・ミニを堪能させてもらった。商業的な失敗はデザインや設計にあったのか、事業の不安定さや大きすぎた野心にあったのか、考えずにはいられない。

実際のところ、これらを生み出したクリス・ローレンス氏とデビッド・オグル氏、ジェレミー・デルマー・モーガン氏、そしてウンガーの4名は、アレック・イシゴニス氏が創造したクラシック・ミニの可能性を、見事に引き出していたと思う。

手前からレッドのユニパワーGT Mk1とフィレンツェ・ブルーのミニ・ジェム Mk1、レッドのオグル SX1000 ライトウエイトGT、ブリティッシュ・グリーンのディープ・サンダーソン DS301
手前からレッドのユニパワーGT Mk1とフィレンツェ・ブルーのミニ・ジェム Mk1、レッドのオグル SX1000 ライトウエイトGT、ブリティッシュ・グリーンのディープ・サンダーソン DS301

ディープ・サンダーソン DS301にオグル SX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGTという4台には、彼らの熱い気持ちと創造力とが、存分に表れている。現在のオーナーへも、しっかり伝わっているに違いない。

今回の4台は、いずれも確かなチューニングとモディファイを受け、これまで大切に維持されてきた。少量生産メーカーが抱いた、クラシック・ミニへの大きな夢とともに。誕生から50年以上が経過した今でも、その輝きはまったく薄れていないように感じられた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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