トヨタ・カローラ・クロスZ(ハイブリッド)試乗 SUV感<使い勝手でコスパ良し

公開 : 2022.02.11 06:25

気になるサスの出来栄えは?

スペックを一読して先ず引っ掛かったのが2WD車のリアサス。

軽量小型のFF車ならトーションビームは常套だが、カローラ系は2WDも4WDもダブルウイッシュボーンを採用。

トヨタ・カローラ・クロスZ(ハイブリッド)
トヨタカローラ・クロスZ(ハイブリッド)    宮澤佳久

ところがカローラ・クロスはトーションビーム。サス形式を見ると大きなヤリス・クロスの印象を持たれても仕方ないだろう。

正直いって期待薄で試乗に臨んだのだが、予想を裏切る。

ダブルウイッシュボーン以上とはいわないが、よく似た乗り味に仕上がっていた。

段差乗り越えなどの突き上げに厳しいのはダブルウイッシュボーンに及ばないが、トーションビームとしては比較的衝撃が抑えられている。

うねり通過での沈み込みストロークの使い方は凡庸なトーションビームにはないしなやかさがあり、全体的に穏やかな乗り心地を示す。

ロールなどの姿勢変化はやや大きめ。高めの重心を硬さでねじ伏せるのではなく往なしで治めていく感じだ。

操縦性の精度感あるいは切れ味とか軽快感を望めば、物足りなさを覚えるかもしれないが、気負わず何気なく操れる感覚はファミリー&レジャー向けのワゴンとして選ぶには似合いだ。

SUVの燃費ハンデはない

パワートレインは他のカローラ系やプリウスで馴染みの1.8Lスプリット式ハイブリッド。

ダイナミックフォースエンジンを採用する最新型と比較すれば旧世代型の印象は否めないが、搭載する2ZR-FXEは急速燃焼こそ採用していないが大量クールドEGRなどの熱効率向上技術を採用し、技術的にはダイナミックフォースエンジンの母体と考えてもいい。

トヨタ・カローラ・クロスZ(ハイブリッド)
トヨタ・カローラ・クロスZ(ハイブリッド)    宮澤佳久

ドライブフィールもトヨタの最新ハイブリッド車と比較して遜色はない。

回転数の急激な変化を抑えたエンジン制御や踏み増し直後のトルクを持ち上げ気味にした電動感覚など、シリーズ式の運転感覚を部分的に取り入れた最新仕様にアップデートされた感じ。

プリウスより半世代くらい進化しているように思えた。

注目は燃費である。

WLTC総合モードで26.2km/L。0.6km/Lながら17インチホイールを履くカローラ・ツーリングより勝っているのだ。

ちなみにRAV4ハイブリッドは21.4km/L(S 2WD)、ヤリス・クロス・ハイブリッドは27.8km/L(Z 2WD)である。

燃費1番で選ぶタイプとは言い難いが、SUVの燃費ハンデは無視できる。

燃費面でもしっかりカローラファミリーなのだ。

使い勝手良し コスパは?

ハイブリッドSで比較するとカローラ・クロスはカローラ・ツーリングの9.9万円高、カローラ・セダンの17.6万円高。

ワゴン/セダンなら1グレード上のモデルを選択できる見当になるが、同車格の範疇に収まっている。

トヨタ・カローラ・クロスZ(ハイブリッド)
トヨタ・カローラ・クロスZ(ハイブリッド)    宮澤佳久

カローラ・クロスのアドバンテージはカローラ系では最も広いキャビンと穏やかな乗り味。

適応用途の拡がりを考えればファミリー&レジャー用途では価格差以上に魅力的である。

視点を変えてRAV4のハイブリッドX 2WDと同等装備で価格差は60万円以上。

1クラス以上も上のパワートレーンを考えれば納得だが、キャビンユーティリティを基本にワゴンとして使うなら適応用途に大きな隔たりはない。

また、日常用途の比率が高まるほどカローラ・クロスに有利になる。

SUVをSUVらしく使いたいユーザーにはすすめにくいモデルだが、SUV云々にこだわらず使い勝手のいいモデルを求めるならカローラ・クロスはけっこうはまるモデル。

ポストワゴン/セダンに位置付けてもいいし、スポーティな乗り味よりも穏やかな運転感覚を求める向きにも適している。

高い悪路対応力を求めないファミリー&レジャー用途向けの最有力候補車なのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。

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