転売やめて! トヨタ・ランドクルーザー 現金一括購入も「ディーラー所有」 背景は

公開 : 2022.03.03 17:55  更新 : 2022.03.25 18:48

現金で一括購入したトヨタ・ランドクルーザーでも、所有権は購入したディーラーに。背景に転売対策がありました。

現金一括購入でもディーラー所有権

執筆:Kumiko Kato(加藤久美子)

昨年8月に発売された新型トヨタランドクルーザー300が、最長4年以上の「長納期」になっている。

ニュースなどでも報道されており、ご存知の方も少なくないだろう。

新型トヨタ・ランドクルーザー
新型トヨタ・ランドクルーザー    トヨタ

関西地方のトヨタ車ディーラーに聞いたところ、納車まで4年は決して大げさではないという。

理由は周知のとおり、半導体関連部品など、新型コロナウイルス感染拡大等に伴う部品の供給不足によるものだ。

自動車は1つ部品がないだけでも完成させることはできない。トヨタに限らず、国内外多くの自動車メーカーが生産調整をおこなっている。

加えてランドクルーザー300は発売されたばかりの新車であり、超人気車種でもある。

想定を大幅に上回る注文が入ってしまったことも長納期となっている理由だ。

さて、そのランクル300。購入時に「登録から最低1年間は転売しない」という誓約書の提出を必須としている。

これは全国の販社で転売防止対策として実施されていると思われる。

そしてその誓約を確実に実行してもらうため、一部の販社がランクル購入客にお願いしていることがある。

現金でも割賦で買っても「購入から最低1年間はディーラーに所有権をつける」というお願いだ。

一般的に現金一括で購入した場合、車検証の所有者欄には購入者の名前が入る。

「△△トヨタ」「ネッツトヨタ〇〇」などのディーラー名になることはありえない。(※金融機関でローンを組んだ場合も原則として所有権は購入者の名前になる)

なぜランクル300購入においては現金購入でもディーラーに所有権が付くのか?

絶対に転売させないための措置

ディーラーに所有権をつける理由。それは簡単に言うと、「絶対に転売をさせないため」である。

例えばの話であるが、現金で購入した客のAさんが、「転売しない」という誓約を破って中古車店B社にランクル300を売却したとしよう。

所有者名義がAさんであればB社はAさんからランクル300を買い取って代金を支払い、名義変更のための書類(印鑑証明、委任状など)を受け取り運輸支局に出向いて名義変更(移転登録)の手続きをおこなう。

書類上の手続きは30分程度で完了し、ランクル300はB社のものになる。

その後B社は自由にオークションに出したり、海外の業者に転売したりが可能になる。

しかし、ディーラーに所有権がついていれば、名義変更をするにもディーラーの書類が必要となる。

B社が所有権を持つトヨタディーラーに依頼をしても、当然だが、所有権解除や名義変更のための書類を出すはずもない。

つまり、転売して名義変更することは不可能となる。

この販売ルールはどういう経緯で始まったのか? トヨタ自動車に経緯を聞いてみた答えをまとめた。

「転売防止の一手段として販売店がはじめたものです」

「クルマを購入いただく皆様の公平性を保ちたいとの考えでご協力をお願いしています」

「あくまでもお願いであり、強制はしておりません」

「また、正確には把握しておりませんが、(現金、割賦に関わらず最低1年間は転売防止のためにディーラーへ所有権をつける)お願いをしているのは、全国で数社程度かと思われます」

「ほとんどの販売店は実施していません」

記事に関わった人々

  • 加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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