忘れがたきレイランドの傑作 ローバーSD1シリーズ 3500からV8-Sまで 前編

公開 : 2022.04.09 07:05  更新 : 2022.08.08 07:13

V8で現代のモデルにも負けない加速力

「英国警察の交通課に努めていた父が、ある日ローバーSD1で帰ってきたんです。当時のわたしは10才。そのクルマに心が奪われたんですよ」。とハーレーが頬を緩ませながら話す。

彼自信が、この3500のオーナーになったのは2011年。5オーナー車だといい、ここ10年の間に錆びたフェンダーが交換され、ボディの下半分が再塗装されている。

ローバー3500(1976〜1986年/英国仕様)
ローバー3500(1976〜1986年/英国仕様)

「路上では少々重さを感じさせますが、それでもV8エンジンは力強くボディを引っ張ります。オートマティックとエンジンとの相性も素晴らしい。このSD1なら、現代のモデルにも負けない加速力を披露できます」

45年前の競合モデルといえば、フォード・グラナダ・ギアMk1やオペル・コモドーレなど。3500のスタイリングは、さぞかし未来的に映ったことだろう。

ハーレーは、MOL 385Pのナンバーを守り継いでいることに、誇りも感じているという。小さい頃からの夢のクルマとして、シリーズ1の3500は気持ちを満たしてくれているそうだ。

実は1976年にも、ローバーP6 2200や、トライアンフ2000と2500の販売は続けられていた。当初はモデルを完全に切り替える計画だったが、量産の都合で、廉価仕様の生産がその翌年後半まで伸ばされていた。結果的に、最初期の3500は希少性が高い。

遅れながらも、エントリーグレードとなるローバー2300と2600が、1977年に登場。オーバーヘッドカムの直列6気筒エンジンは、従来のトライアンフが採用していたものがベースだが、新ユニットと表現したくなるほど大幅な改良が施されていた。

エントリーグレードの2300

2300がターゲットとしたのは、フォード・グラナダ2.3Lや、同じグループ内のプリンセス  2200 HLSなどのドライバー。若い管理職たちを想定していた。

ブリティッシュ・レイランド社はPRとして、俳優のアントン・ロジャース氏が主演する、トゥ・モア・フォー・ザ・ロードという映画をプロデュース。故障したボルボをSD1が助けるというシーンが含まれていた。

ローバー2300(1977〜1986年/英国仕様)
ローバー2300(1977〜1986年/英国仕様)

3500ではリア・サスペンションにセルフレベリング機能が装備されていたが、廉価版の2300では省略。一般的なダンパーに可変レートのコイルスプリングが組み合わせられている。

5速MTとカセットテープ・プレイヤー、パワーウインドウ、集中ドアロックもオプション。タコメーターと油圧計もない。上級グレードとは異なり、インテリアを眺めるとブランク・パネルの多さが目に付いた。

そんなエントリーグレードのシリーズ1 2300を所有するのが、クリス・パウエル氏。スチールホイールを履き、助手席側のドアミラーがないことで、価格差が伝わってくる。オプションだったカリビアン・ブルー塗装のおかげで、4台では1番写真映えするが。

パウエルは、XON 172Tのクルマの2オーナー目だという。「最初のオーナーは5年ほど乗ったようです。それから25年以上、ガレージで眠っていました。わたしがオーナーになったのは、2012年です」

「再始動に必要だった作業は、さほど多くありませんでした。ボディもほとんど錆びのない状態。ホイールアーチ付近を除いて」。とパウエルが振り返る。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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