忘れがたきレイランドの傑作 ローバーSD1シリーズ 3500からV8-Sまで 前編

公開 : 2022.04.09 07:05

ローバーの新時代を象徴するサルーンとして誕生したSD1。カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いた傑作を、英国編集部がご紹介します。

フェラーリ・デイトナ風のシルエット

1976年、従来モデルからの大転換を図ったSD1シリーズ第一弾、ローバー3500が発売された。当時のローバー・ブランドも属していた、ブリティッシュ・レイランド社の新時代を告げるクルマといえた。

英国人にとって、工作機械の丸いハンドルを模したブリティッシュ・レイランド社のロゴは、良いイメージが湧かないものかもしれない。減速する英国産業を想起させる、刻印にも見えるだろう。しかし、必ずしもクルマが悪いわけではなかった。

ローバー3500(1976〜1986年/英国仕様)
ローバー3500(1976〜1986年/英国仕様)

SD1シリーズの開発が始まったのは1971年。ローバーP6やトライアンフ2500などの後継モデルとして、大きな期待が掛かっていた。

スタイリングを担当したのは、デザイナーのデビッド・ベイチュ氏。スーパーカー風のくさび形シルエットを持つ5ドアボディは、目を細めればフェラーリ365 GTB/4 デイトナの遠い親戚にも見えなくはない。

技術的な指揮をとったのは、レンジローバーの父とも呼ばれたスペン・キング氏。ところが開発予算は限られ、可能な限り従来のコンポーネントを利用することが求められた。

ローバーP6では、ド・ディオンアクスルとディスクブレーキがリアタイヤ側に採用されていたが、SD1ではリジッドアスクルとドラムブレーキへダウングレード。エレガントなスタイリングからは見えない部分で、一層のコスト削減が実施されていた。

イメージを深く傷つけた品質への不満

1976年に華々しく発表されたローバーSD1シリーズは、1977年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。アウディ100 C2を破るという快挙だった。安全性の高いモデルへ与えられる、ドン・セーフティ賞も獲得している。

その反面、当時のAUTOCARでは次のように評価している。「ローバーには幾つかの弱点がります。しかし、モデルライフ中のアップデートで修正可能だと信じています」

ローバー3500(1976〜1986年/英国仕様)
ローバー3500(1976〜1986年/英国仕様)

その事実は、ブリティッシュ・レイランドを苦しめてきた元凶といえた。品質管理は向上ぜず、生産は間に合わず、数年後には8か月のオーダーストックを抱えた。改善しない品質に対する不満が、SD1シリーズのイメージを深く傷つけた。

それでも、本日お集まりいただいた4台のSD1を眺めると、クルマとして目指された高みには関心せざるを得ない。ジョナサン・ハーレー氏が大切にしている、極上コンディションの1976年式3500からは、特にそんな印象を受ける。

3.5L V8エンジンを搭載し、190km/h以上の最高速度を実現しながら、新車時の値段はお手頃といえた4750ポンド。美しく豪華な5ドアのファストバックだ。群れを追わないクルマ開発という、P4時代からのローバーの伝統にも忠実といえた。

明るいミダス・ゴールドのボディに、シルバーとブラックのホイールを履くハーレーの3500は、SD1シリーズ最初期のモデル。ブリティッシュ・レイランド社のディレクター、デレク・ウィッタカー氏が最初のオーナーだったという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Robrts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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