英米オフローダー比較 フォード・ブロンコ x ランドローバー・ディフェンダー 尊重したい独自性 後編

公開 : 2022.04.09 09:46

周囲の環境との近さを感じるブロンコ

一方のブロンコは、残念ながらそこまで印象は良くない。2.3L直列4気筒のエコブースト・エンジンは、42.6kg-mの最大トルクを得るのに3500rpmまで回す必要がある。加速中は、
10速ATが変速を繰り返していることが、エンジン音で伝わってくる。

セパレートシャシー構造と乗り心地の洗練性も、今ひとつ。路面に浮き出た大きめの隆起部分を通過すると、ステアリングホイールを通じて振動が伝わってくる。シャシーの振動が、バックミラーへ伝わる場面もあった。

ブラックのフォード・ブロンコ 2.3エコブーストと、ダークブルーのランドローバー・ディフェンダー 90 D250
ブラックのフォード・ブロンコ 2.3エコブーストと、ダークブルーのランドローバーディフェンダー 90 D250

それでもブロンコ単体で見れば、ドライブフィールは妥当な水準にある。周囲の環境と、より近さを感じるという点も悪くはない。同時に、ディフェンダーとの差異も小さくはない。

かつてのランドローバー・ディフェンダーとフォード・ブロンコは、より近い存在だった。しかし、最新型ではそれぞれ独自の方向性が与えられている。お互いの仕上がりを、筆者は尊重したいと思う。

ブロンコは、ジープラングラーに対抗できる本格的で飾らない、真のオフローダーだ。他方のディフェンダーは、唸らされるほどの質感を備えた、世界で最も有能なオフローダーといえる。

ディフェンダーが、1つ上のクラスに属することは間違いない。だとしても、新しいブロンコには選びたいと思わせる魅力がある。オーナーによっては、感じ方も異なることだろう。機会があれば一度、フォード・ブロンコに触れてみて欲しい。

フォード・ブロンコの歴史 5年のブランク

1966年から1996年の30年間に、5世代という進化を重ねて販売が続けられた、フォード・ブロンコ。セパレートシャシー構造に2ドアボディのオフローダーというパッケージが、変わることはなかった。

ゆとりのある2列目シートと大きな荷室を備え、ピックアップトラックのようにアメリカの実用車として長く愛されてきた。脱着可能なハードトップも特徴といえる。

フォード・ブロンコ 2.3エコブースト・アウターバンクス(英国仕様)
フォード・ブロンコ 2.3エコブースト・アウターバンクス(英国仕様)

フォード・ブロンコと同様に、シボレー・ブレイザーやインターナショナル・ハーベスター・スカウトも、CJ-5型のジープを意識するように似た構造が与えられていた。

市場変化に合わせて、ブロンコには派生モデルも誕生。ブロンコIIは、オリジナルのブロンコとは基本的には異なるコンパクトSUVだった。新しいブロンコにも、ブロンコ・スポーツがラインナップしている。これも、車両構造はまったく異なる。

ジープがラングラーへ進化し、実用性を高めていく中で、5代目までのブロンコは変わろうとしなかった。4ドアボディも用意されることはなかった。

1994年、OJ.シンプソン氏がブロンコに乗り警察とカーチェイスをした様子が、人気に悪影響を与えたという側面もある。しかし北米のユーザーは、より広い車内と、より多いドアを以前から望んでいた。販売は伸び悩み、ブロンコは一度姿を消してしまった。

2021年に一新されたブロンコの車内は広く、4ドアボディが設定されている。今回は、市場のSUV人気を上手に掴むことができるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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