フォルクスワーゲン・パサート・エステート・エグゼクティブ・スタイル2.0TDIブルーモーション

公開 : 2014.06.27 23:20  更新 : 2017.05.29 18:58

■どんなクルマ?

このクルマは最も豪奢なフォルクスワーゲンパサート・ワゴンではあるのだがが、来年には完全に生まれ変わったパサートが発表されることは頭に置いておかなければならない。

フォルクスワーゲンは今年の初めに、ハイラインとスポーツ、更にはRラインをエグゼクティブとエグゼクティブ・スタイル・パッケージに集約するとアナウンスしたばかりである。

言い換えるならば上記のライン・チェンジを今回のモデルが体現しているのだ。したがって、このクルマにはDABラジオ、本革製マルチ・ファンクション・ステアリング、フロント・シート・ヒーター、クルーズ・コントロール、全方向パーキング・センサー、左右独立エアコンなどが用意される。またそれだけには終わらず、スポーツ・サスペンションによって車高は15mm下げられ、18インチのアロイ・ホイールとリアのプライバシー・ガラスも備っている。

また昨年に販売が開始されたフォード・モンデオ・ビジネス・エディションの属する社用車のフィールドにも積極的にアピールしており、英国内の話ではあるのだが、モンデオをプライベートも兼ねて会社から貸与された場合は本体価格の20%分である£833(12万円)が、また40%の場合は£1,666(25万円)が会社から支給されることになる。一方パサートの場合は20%で£1,100(16万円)、40%で£2,201(33万円)の支給を受けることができるのである。

仮に6速DSGを選択した場合はトータルの車両価格は£29,310(434万円)だということになる。しかしながら、メタリック塗装が施され、パーク・アシスト・システム、アップグレード版のインフォテイメント・パッケージを追加装着した今回のテスト車両は最終的に£32,000(474万円)にまで膨れ上がった。決して安くないことは事実であるものの、ヒュンダイi40エステートやスコダ・スペルブ・エステート、ヴォグゾール・インシグニア・スポーツ・ツアラーなどのライバルとして有力視されている事に変わりない。しかしながら、最も大事なのはパサートが今もなおこのクラスのトップであり続けているのかどうかである。

■どんな感じ?

快適かつ実用的であると同時に、ボンネットの下にはスポーツ性能を仄めかすエッセンスが取り入れられている。

インテリアは総じて魅力的だといえる。レザー・シートは快適でドライバーの好みに簡単に調整することができ、助手席とともにたっぷりとした余裕がある。また1731mmあるホイール・ベースの恩恵を受けて、たとえ長距離ドライブをしたとしても後部座席から頭上や足元のスペースに対する不満は出てこないはずだ。

柔らかい素材が多く用いられていることによって美的にも優れる。しかしながら、極めて特別な気分を味わうことはない上に既に時代遅れになりつつある印象は拭えない。使い勝手は悪くないのだがインフォテイメント・ディスプレイとコンソール中心に備え付けられたアナログ時計が特にそう感じさせているようだ。

テスト車両にはフォルクスワーゲン製の2.0ℓTDIブルーモーション・エンジンが組み合わされていたため、最高出力は177ps、最大トルクは38.7kgmを発揮する。静止状態から100km/hまでは8.6秒で到達し、高速域でのエンジンは非常に静かで洗練されているうえに、キャビンへの騒音の侵入もとても少ない。6速DSGのマナーもいつも通り素晴らしく、ステアリングにマウントされたパドル・シフトを使用すれば追い越しの際に適切なギアを選択する事ができる。

複合サイクル燃費は19.2km/ℓ、CO2排出量は136g/kmというのがフォルクスワーゲンの公表値で、イギリスにおける1年間あたりの税金は驚くべきことに僅か£130(2万円)となる。

唯一の不満は、締めあげられたサスペンションに起因する路上での乗り心地の悪さだ。高速走路ではそれらの不満は払拭されるのだが、市街地での走行では路面の凹凸を頻繁に拾う。そのせいで、パサートの落ち着きのあるスムーズな印象を台無しにする結果となっている。

しかしながら、パサートを実用性で選んでもいいと言えるほど多くの収納スペースが用意されている。たとえば、センター・トンネルや高さの調整ができるアームレストの下部、またトランク・ルームなどで、リア・シートを起こしたままの状態で収容容積は603ℓ、倒せば1731ℓが確保されているのである。

したがってインシグニア・スポーツ・ツアラーの540/1530ℓやヒュンダイi40エステートの553/1719ℓよりかは大きい容量を持ち、スコダ・スペルブ・エステートの巨大な633/1865ℓを遥かに下回る結果となる。

■「買い」か?

インテリアのフィッティングやフィニッシュを見れば、パサートにわずかながら軍配が上がる。そのうえ少しばかり高価ではあるが、快適かつ実用性に優れていることには変わりない。

仮に来年デビューの新しいモデルを待てば、シートを畳まずとも650ℓの収容能力を持つラゲッジ・ルームと、新デザインのインフォテイメント・システムを手にすることができるが、いまこのクルマを買ったとしてもクラス・ベストなワゴンを購入したことに変わりはない。

(ダレン・モス)

フォルクスワーゲン・パサート・エステート・エグゼクティブ・スタイル2.0TDIブルーモーション

価格 £29,310(506万円)
最高速度 220km/h
0-100km/h加速 8.6秒
燃費 19.2km/ℓ
CO2排出量 136g/km
乾燥重量 1580kg
エンジン 直列4気筒1968ccディーゼル
最高出力 177ps/4200rpm
最大トルク 38.7kg-m/1750rpm
ギアボックス 6速DSG

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