世界市場の気づかない価値 ジャガーXJ220を振り返る ゴージャスなスーパーカー 前編

公開 : 2022.06.04 09:45

最新の911 GT3に勝る中間加速

当初、エンジンはV型12気筒だと告知されていたが、最終的に3.5LのV型6気筒ツインターボへ変更され、注文していた投資家から批判を集めた。四輪駆動も見送られ、後輪駆動となった。

一方、1990年代に入り景気は急速に悪化。エンジンの変更は注文をキャンセルする格好の理由になった。このV6ツインターボは、トム・ウォーキンショー・レーシングのグループCカー、XJR-10やXJR-11で不満のない成績を納めていたのだが。

ジャガーXJ220(1991〜1993年/英国仕様)
ジャガーXJ220(1991〜1993年/英国仕様)

コンセプトカーから6気筒を失っても、XJ220は速かった。0-97km/h加速3.6秒は、今でも高性能モデルとして充分に通用する。

しかも後輪駆動で、トラクション・コントロールやローンチ・コントロールといった、電子アシストは一切なし。当時最先端のタイヤと、マニュアル・トランスミッションを操るドライバーによって成し遂げられた数字だった。

新しい992型のポルシェ911 GT3と、加速性能を比べてみよう。リアエンジンというトラクションと、ステアリングホイールに付いたシフトパドルの効果が発揮され、静止状態から225km/hくらいまでの加速は、911 GT3の方が速い。

しかし、変速なしでの中間加速を比べると逆転する。パワーをタイヤが受け止められるようになる、100km/h前後からはXJ220が有利。97km/hから128km/hと、209km/hから241km/hまでの加速は、0.5秒も短くこなせる。

英国の自動車試験場、ミルブルックの限られたストレートでも、273km/h(時速170マイル)までの加速テストを実施できた最初の量産車だった。当時、実際にステアリングホイールを握った筆者には、忘れられない記憶だ。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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