BMWかロールス・ロイスで選べるV8 ベントレー・アルナージ 英国版中古車ガイド

公開 : 2022.06.29 08:25

意外に手頃な価格で手に入るアルナージ。怒涛の加速力と優秀な旋回性を持つ大型サルーンを、英国編集部がご紹介します。

グリーンレーベルとレッドレーベル

古く大きく重いラグジュアリーな4ドアサルーンに、クルマ好きが惹かれるというケースは多くない。それでも、ベントレーアルナージには神秘的な魅力が備わっている。円熟味を増した、独特の風情がある。

開発が始まった1990年代、ベントレーは英国の製造業大手、ヴィッカーズ社の傘下にあった。だが1998年のアルナージ発売時点では、フォルクスワーゲン・グループの一員になっていた。ところがエンジンは、BMWの4.4L V8ツインターボを搭載していた。

ベントレー・アルナージ(1998〜2009年/英国仕様)
ベントレー・アルナージ(1998〜2009年/英国仕様)

複雑さを回避するため、1999年にフォルクスワーゲン側はベントレー・ターボR譲りの旧式化した6.75L V8ターボエンジンを登用。ボディシェルを強化しつつ、2000年にはBMWエンジンをラインナップから外した。

この頃のアルナージを区別するため、ベントレーはBMWエンジンを搭載したモデルをグリーンレーベルと命名。ターボR用のロールス・ロイス・エンジンを載せた方は、レッドレーベルと名付けられた。

2001年にはシリーズ2へ進化し、ホイールベースを25cm延長したアルナージ RLが登場。同時にエンジンは改良を受け、ツインターボ化と燃料インジェクションの採用などで、排出ガス規制の強化に向けた対応が施された。

2002年に、レッドレーベルはアルナージ Rへアップデート。さらにパワフルなアルナージ Tも登場し、最高出力460psと最大トルク89.0kg-mという、スーパーカー級の動力性能を獲得した。そして2007年には、500psと101.8kg-mへさらに増強された。

コーナリングも秀逸なビッグ・ベントレー

それでも、登場から20年以上も経過したコテコテのブリティッシュ・サルーンには惹かれない、という読者もいらっしゃると思う。しかし、大きくパワフルなだけではない。

筆者のオススメは、6.75Lのツインターボ。エレガントなボディに押し込められたV8エンジンが生み出す極太のトルクで、アルナージ Tは0-97km/h加速を5.5秒でこなす。最高速度は288km/hがうたわれ、高速道路でも圧倒的だった。

ベントレー・アルナージ(1998〜2009年/英国仕様)
ベントレー・アルナージ(1998〜2009年/英国仕様)

全長は約5.4mあるが、コーナリングも秀逸。もし充分なスキルと、不足ない道幅があれば、豪快なドリフトでタイトコーナーを抜けることも可能。ちょっと面白そうだな、と思った読者もいらっしゃるのではないだろうか。

ドアを開けば、贅沢にウッドパネルがあしらわれ、柔らかいレザーで包まれたインテリアが迎えてくれる。車内空間は現代モデルと比べれば広いと感じないかもしれないが、豪華さではまったく引けを取らない。

もしかすると、内装パーツの一部が走行中に落ちるかもしれない。それは古いベントレーでは珍しくないこと。味の1つだ。

アルナージを維持するには、それなりの財力も必要になる。しかし、絶滅危惧種といえる大排気量のラグジュアリー・サルーンを保護し、将来へ残すなら絶好の機会にある。今なら、取引価格は想像以上にお手頃といえる。

現行モデルのベントレー・コンチネンタルフライングスパー、2020年に生産終了を迎えたミュルザンヌは、素晴らしい進化を遂げた。源流に当たるアルナージで、その前触れを楽しむのも悪くない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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