ピレリ・ソットゼロへ交換 マクラーレンGT(4) 長期テスト 低温時のグリップに一貫性

公開 : 2022.06.26 09:45

最高出力620psのグランドツアラー、マクラーレンGT。英国編集部が毎日の通勤に利用し、その能力を検証します。

積算4021km ピレリ・ソットゼロへ交換

普段使いできるスーパーカー、マクラーレンGT。それが本当なら、季節や天候にとらわれることなく乗れるべきだ。寒い季節でも、問題なく走りたいところ。

しかし、標準タイヤのピレリPゼロが、英国の寒い朝が得意でないのは仕方ない。自宅を出発するとカーブがあり、クルマを信じ切っていると慌てることがある。テールが路肩へ流れ、ヘッドライトが思いも寄らない方向を照らすことも。

マクラーレンGT ルクス(英国仕様)
マクラーレンGT ルクス(英国仕様)

驚いて必要以上にアクセルペダルを戻してしまうと、マクラーレンGTはさらに安定しなくなる。気温が5度以下で、620psもの最高出力を備えるミドシップ・スーパーカーなのだから、想像の範囲とはいえるけれど。

そこで、スタッドレスタイヤを試すことにした。少し時間が経った話題で恐縮だが。

取り付けはマクラーレンのディーラーで。AUTOCARだからといって特別な対応があるわけでもなく、費用は4本で2556ポンド(約42万円)。驚くような金額だが、マクラーレンGT専用に設計されたピレリ・ソットゼロを履くことができる。

サイズはフロントが225/35R20で、リアが295/30 R21というもの。意外にフロントが細い。クルマをジャッキアップし、ホイールから夏タイヤを外し、組み直すという作業で終了する。

外した夏タイヤの置き場所だが、多くのマクラーレン・オーナーなら、屋根付きの広いガレージがあるはず。街なかのタイヤ店では保管してくれる場所もあるが、ディーラー以外ではマクラーレンGT専用のタイヤは入手が難しい。

低い気温でもグリップに一貫性

果たして、スタッドレスタイヤになったマクラーレンGT。間違いなく、遥かに安全になった。速度域に関わらずグリップ力に一貫性が出て、トラクションが急に抜けるようなこともない。

気温が低い時に、アクセルペダルとステアリングホイールを積極的に動かしてみたが、タイヤはしっかり路面を掴んでいた。これで姿勢を乱すには、かなり気持ちを奮い立たせる必要がある。もちろん公道では、控えめに。

ブルーのマクラーレンGT ルクスとシルバーのマクラーレン720 S
ブルーのマクラーレンGT ルクスとシルバーのマクラーレン720 S

大きな水たまりを通過した時にも感心した。タイヤ幅が広いマクラーレンGTだが、大きい溝が不足なく水をかき出してくれる。夏タイヤより、ステアリングホイールへ伝わる不安な手応えが小さくなった。

ロードノイズは少し大きいようだが、明確な違いを感じるほどではない。スタッドレスタイヤには、ノイズキャンセリング・システムとピレリが呼ぶ、吸音スポンジが内蔵されていないからもしれない。

最高速度は240km/hに制限される。といっても、これを超えての運転は日常的には不可能だ。

気温が上昇すると走りがどう変化するのか興味深いが、マクラーレンGTはその前に返却予定。少なくとも気温が12度前後なら、スタッドレスタイヤでもまったく違和感なく運転できる。ますます普段使いしやすくなった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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