ガソリン高騰でも楽しみたい オースチン・ヒーレー・スプライト/スマート・ロードスター・ブラバス 1.0L以下のクラシック 後編

公開 : 2022.07.10 07:07

スマートロードスター・クーペ・ブラバス(2005年)

今回の5台の中では、最も年式の新しいスマート・ロードスター・クーペ・ブラバス。見た目もモダンだ。だが、シンプルなドライビング体験と、ちょっとしたユーモアのセンスを好むなら、このクルマはベストチョイスの1台といえる。

スマートのロードスターであり、クーペで、ブラバスというチューナーの手が加えられ、コテコテの名前が与えられているが、精神的にはMGミジェットにも近い。さらに活発に運転しても燃費は14.0km/L以上。穏やかな気持ちなら、18.0km/Lは狙える。

スマート・ロードスター・クーペ・ブラバス(2005年/英国仕様)
スマート・ロードスター・クーペ・ブラバス(2005年/英国仕様)

プラスティック製ボディのスタイリングは特徴的で個性的。カリスマ性すら感じる。熱心なオーナーズクラブも、英国には存在する。

スマートの起源は、メルセデス・ベンツ・ブランドの親会社、ダイムラー。さらにブラバスはメルセデス・ベンツのチューニングを得意とした企業で、シティカーのスマートを高速なスポーツカーへ仕立てている。

新車当時に試乗した記憶を振り返れば、まさにゴーカートのようなクルマだった。再び2022年に乗ってみても、その印象に変わりはない。

乗り心地は硬く、6速セミATはシフトレバーやパドルで変速できるものの、滑らかとはいいにくい。ブラバスという響きから想像するほど、速くもない。それでも運転は楽しい。

サスペンションは通常のロードスターより15mm低く、スピード感を高めている。エンジンやエグゾーストが放つノイズも悪くない。ウェイストゲート・ホイッスルも、興奮を誘う要素の1つだ。

れっきとしたハンドリングマシン

インテリアにはシルバーの差し色が与えられているものの、プラスティック製パネルが多く、カラーも暗め。そのかわり、シートを覆うレザーは丈夫だ。

ロードスター・クーペということで、ラゲッジスペースも大きい。テールガラスを通して外から丸見えだが、ジャガーEタイプでも同じこと。ちなみに、スペアタイヤは備わらないからご注意を。

スマート・ロードスター・クーペ・ブラバス(2005年/英国仕様)
スマート・ロードスター・クーペ・ブラバス(2005年/英国仕様)

オープンエアを楽しみたい時は、電動のキャンバストップを後方へスライドさせて、2本のサイドバーを取り外せばOK。ミドシップだから、フロントの荷室にサイドバーを収納できる。

サーキットを走れば、秀でたグリップ力と制動力を確かめられる。れっきとしたハンドリングマシンであることを、実感できるだろう。

ただし熱狂的なスマート・ファンでも、あるいはブラバス・ファンでも、維持は容易ではない。定期的なメンテナンス間隔が短く、ランニングコストは高くつくし、補修部品も近年は入手が難しくなってきている。

今回のクルマのオーナー、フラン・テリー氏によれば、ホイールも痛みやすいそうだ。とはいえ、インターネットを駆使すれば、問題解決に繋がる情報を得られる時代でもある。

状態の良い、オリジナル状態が保たれたスマート・ロードスター・クーペ・ブラバスを発見したら、飛び込んでみるのも悪くない。きっと想像以上の楽しみが待っている。

スリリングな体験に浸っていても、スピード違反で捕まるリスクは低い。ガソリン代で昼食を節約する必要も減る。駐車場に停めれば注目度は高いし、同じクルマとすれ違うことも珍しい。

協力:リアル・スマートカー・オーナーズクラブ

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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