ルノースポールの歴史 スピダーからトロフィーRまで 写真とともに振り返る

公開 : 2022.07.24 06:05

モータースポーツ部門として設立されたルノースポールは、今やルノーの高性能車ブランドとなりました。初の市販モデルであるスピダーから、ニュル最速タイムを保持するメガーヌRSトロフィーRまで、その歩みを振り返ります。

RS初の市販モデルは窓なしオープンカー

ルノースポール(Renault Sport)は、1976年にアルピーヌとゴルディーニを統合して設立されたが、「RS」の名を冠した市販モデルを発売するまでには、20年の歳月を要した。

1994年にアルピーヌブランドを廃止し、黒字に転換したルノーは、そのスポーツの血統を世界に知らしめるモデルを求めていた。また、ルノーの既存モデルをベースとすることなく、ワンメイクのレースシリーズのベースとなることも期待されていた。

ルノースポール・スピダーは、屋根も窓もない、2シーターのライトウェイト・スポーツカーである。
ルノースポール・スピダーは、屋根も窓もない、2シーターのライトウェイト・スポーツカーである。

1995年のジュネーブ・モーターショーで登場した「プロジェクトW94」は、後にミドエンジンの後輪駆動、2シーター、ルーフレス、そして当初はフロントガラスなしのスポーツカー、ルノースポール・スピダーとして発売された。アルミニウムのシャシーにプラスチック複合材のボディを載せ、クリオ・ウィリアムズに搭載されていた2.0L 4気筒のF7Rエンジンを流用。重量930kgとロータス・エリーゼよりは重かったが、最高出力150psを発揮し、0-100km/h加速は6.5秒を記録している。

1997年にはフロントガラスを装備した改良型が登場し、英国や日本向けに右ハンドル車も製造されたが、世界全体の総販売台数は1685台のみ。今やロータスの象徴となったエリーゼの10分の1しか売れていない。

ドライバーを震撼させるクリオV6の登場

ルノースポールはそれ以降、クリオ2を皮切りに、ルノーをベースとした高性能モデルに注力するようになる。クリオ16vやクリオ・ウィリアムズも手がけたが、いずれも「スポール」の名を冠してはいなかった。

クリオ・ルノースポール172は、2.0L自然吸気エンジンを搭載し、最高出力170psにチューンアップして2000年に発売された。スポーティなスタイルとOZ製ホイールによって従来のクリオとは一線を画し、研ぎ澄まされたシャシーは、ライバルをはるかにしのぐハンドリングを実現している。その後、フェイスリフトが行われ、さらに硬いサスペンションを採用し、軽量化のためにエアコンとアンチロックブレーキを下ろした172カップが登場した。

モータースポーツ・プロジェクトとしてスタートしたクリオV6は、ミドマウントの6気筒エンジンで後輪にのみパワーを供給する。
モータースポーツ・プロジェクトとしてスタートしたクリオV6は、ミドマウントの6気筒エンジンで後輪にのみパワーを供給する。

一方、ルノースポール・スピダーに代わるスポーツモデルとして、ミドエンジンの過激なクリオも開発している。ルノー5ターボのような走りを復活させたいという同社幹部の要望を受け、公道向けモデルの開発にゴーサインが出る。

クリオV6ルノースポールは、ベースとなったクリオを大幅に改良し、絶叫するV6エンジンをドライバーの真後ろに配置。230psのパワーを後輪に供給するこのクルマは、一般ドライバーには手に余るような存在だった。当時、英AUTOCAR編集部はこのクルマのドライビングについて、「ライオンの檻の中で歯科医を始めるようなものだ。噛まれるのは当たり前で、いつ、どの程度噛まれるかが問題である」と評している。

2003年、ルノーはこのモデルにさらに手を加え、出力を255psに引き上げ、当時世界で最もパワフルな市販ホットハッチとした。ホイールベース、ワイドトレッド、強化スプリング、大径ホイールによりグリップ力を増したが、それでも不注意なドライバーを驚かせることはあった。高い価格設定も相まって、販売台数は比較的少なく、現在でも珍重されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    トム・モーガン・フリーランダー

    Tom Morgan-Freelander

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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