気取らないゴルフ的:フォルクスワーゲンID.3 反発意見も多い:テスラ・モデル3 カッコだけじゃない:ルノー・メガーヌ E-テック お手頃EV 12台比較(3)

公開 : 2024.04.17 19:05

2024年の英国で売られているEVで、コスパ1番といえる1台とは? 4万ポンド(約756万円)以下の条件で12台を選出 中国の新興メーカーも交え、英国編集部が一挙試乗

7位:フォルクスワーゲンID.3 気取らないゴルフのよう

フォルクスワーゲンは、お手頃なハッチバック、ID.3を他社よりいち早く発売。半世紀前のゴルフのように、電動化時代にも成功を掴むのではないかと期待されていた。

ところが、2020年には一定の販売数を稼ぎ出したID.3ながら、以降の支持は低迷。ソフトウェアの不具合がイメージを悪化させ、新市場を牽引できなかった。

フォルクスワーゲンID.3 58KWH プロ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.3 58KWH プロ(英国仕様)

同クラスのゴルフより、英国価格は1万ポンド(約189万円)も高かった。直感的とはいえないインフォテインメント・システムや、価格に見合わないインテリアも、ユーザーの共感を遠のけた。

そんな状況を打開すべく、2023年にID.3はフェイスリフト。フロント回りをリフレッシュし、シンプルな2グレード体系へ改め、インテリアの質感を向上させた。安価な中国製モデルの競争力も、相応に高められていたのだが。

ID.3は、多くの面で改善されている。インテリアの印象は良くなった。信頼性も高いようだ。58kWhの駆動用バッテリーから、428kmと充分な航続距離も得ている。77kWhにすれば、558kmを走れる。

エントリーグレードのID.3は、気取らないゴルフのように心地良く親しみやすい。車内は開放的で、居心地が良い。製造品質は全般的に高い。唯一、インフォテインメント・システムがお茶を濁す。それでも、基本的な操作は難しくない。

ステアリングやペダルの反応、乗り心地は、MG 4 EVより水準が上。当然ともいえるが、価格差を納得させる洗練度にある。イチオシというわけではないものの、好印象を与えるフォルクスワーゲンだ。

6位:テスラモデル3 効率に優れた電動サルーン

テスラ・モデル3は、予想ほど順位を伸ばさなかった。トップ3へ選んだ審査員は3名いたものの、残りの3名が同じ印象を抱いたわけではなかった。

とはいえ、モデル3は電費効率に優れたバッテリーEVだ。現実的に、1kWh当たり6.4kmを走れるモデルは、このクラスに存在しないといっていい。回生ブレーキが、驚くほど有能なことが功を奏している。

テスラ・モデル3 RWD(英国仕様)
テスラ・モデル3 RWD(英国仕様)

57.5kWhと比較的小さな駆動用バッテリーで、ライバル以上といえる511kmの航続距離が主張されることにも、それが現れている。車内空間は広く、急速充電能力も高い。車重が軽めに収まっているおかげで、操縦性や動力性能でもアドバンテージを持つ。

シートは座り心地が良く、ドライビングポジションも良好。多彩な標準装備も強みだろう。背の高いSUVではなく、トラディショナルなサルーンなのも良い。モデル3の実力は低くない。

しかし、ユーザーインターフェイスへ強く反発する意見が多かった。ウインカーは、レバーではなくステアリングホイール上のボタンで操作する。当初は少し過剰反応では?と思ったが、実際に運転してみたら、その意見へ同意せずにいられなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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