ブランド新時代を切り拓く キャデラック・リリックへ試乗 欧州の競合に伍するBEV 前編

公開 : 2022.08.12 08:25

アメリカの上級ブランド、キャデラックからBEVの大型SUVが登場。欧州の競合へ驚異となるのか、英国編集部が評価しました。

BEV専用プラットフォームのアルティウム

アメリカの上級ブランド、キャデラックとして初のバッテリーEV(BEV)モデル、リリックが誕生した。これからのブランド成長を叶えるうえで、重要な役割を担う新モデルといえる。新しいデザイン・テイストの確立も狙われている。

ライバルモデルとして挙げられるのは、アウディeトロンBMW iXなど。2023年初頭には、北米のキャデラック・ディーラーへ並ぶ予定にある。

キャデラック・リリック RWD(北米仕様)
キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

基礎骨格としているのは、親会社のゼネラル・モーターズ(GM)が開発した、BEV専用プラットフォームのアルティウム。ボディサイズの大きいカテゴリーを前提としながら汎用性にも優れ、複数のモデルで利用される予定にある。

既に生産が始まっているGMC ハマーEVや、開発中のBEV版シボレー・ブレイザー、シボレー・シルバラードなども、アルティウムの上に成り立つ。ブライトドロップ 600という新しい商用バンも。

今のところ、英国へ正規に導入されているキャデラックは、CT5-V ブラックウイングなど、一部のモデルに限られている。だが、BEV化でそれも変わるかもしれない。実際、リリックは英国へ上陸する可能性が高いと予想されている。

今回、筆者はデトロイトの西、ミシガン州にあるGMのミルフォード試験場で、真新しいリリックへ試乗する機会を得た。走行が許されたルートは限定的で、いろいろな制限も掛けられていたが、充分に概要は確かめることができた。

従来の型を破ったスタイリング

近年のキャデラックは、お膝元の北米市場で少々苦戦気味。欧州ブランドに対して、不満のない競争力を発揮できていなかった。プレミアム・サルーンのカテゴリーでも、大型SUVのカテゴリーでも。

キャデラックの経営陣は、そんな状況を打破する切り札として、BEVに期待を寄せている。アルティウム・プラットフォームを採用したモデルが、ブランドを改革できると考えている。

キャデラック・リリック RWD(北米仕様)
キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

リリックのスタイリングは、新しいキャデラックを象徴するものとして従来の型を破っている。このテイストが、順次進展されていくようだ。まだコンセプトモデルの段階だが、シューティングブレークのセレスティクにも与えられている。

ちなみに、このセレスティクは、ベントレーロールス・ロイスのサルーンに対抗することが目指されている。2024年頃から職人によるハンドビルドで製造され、英国価格は24万6000ポンド(約4108万円)前後が見込まれている。

SUVのリリックは、既存のエスカレードに並ぶような、よりメジャー側に位置するモデル。キャデラックが輝いていた1950年代や1960年代のデザイン要素を取り込み、モダンに展開されている。

特徴といえるフロントグリルに当たる部分は、近年のモデルと共通して、上下に薄い5角形を踏襲する。だが、冷却機能が不要になったことで塞がれており、システムオンで多数のLEDが優しく点灯するパネルと化した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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