「渋滞」を避けたい カーナビへのプローブ情報、この夏からどう変わる? 転機は大震災

公開 : 2022.08.13 05:45

自然災害・au通信障害で活きた協調体制

複数の会社から情報提供を受けるメリットは想像以上に大きかった。

まず、災害への対応力が高いこともわかった。台風により停電が発生して感知器が使えなかった時でも、インフラに頼らないプローブ情報の補完により交通情報の提供が継続できたのだ。

破線の矢印が、取得されたプローブ情報。地図上のこうした情報を見やすくするのもカーナビ各社の技術の見せ所。画像は、JVCケンウッドの彩速ナビTYPE M 2022年モデルのスマートカラーという新地図色。
破線の矢印が、取得されたプローブ情報。地図上のこうした情報を見やすくするのもカーナビ各社の技術の見せ所。画像は、JVCケンウッドの彩速ナビTYPE M 2022年モデルのスマートカラーという新地図色。    JVCケンウッド

また、発表当日を前後して発生したauの通信障害に対しても、auの通信モジュールを使っていたトヨタ車からはプローブデータが収集できなくなったが、別のキャリアを使っている他メーカーのデータを使うことで、渋滞回避に足りる十分なプローブデータは取得できていたという。

auの通信障害を契機に、緊急時のローミングについて議論されているが、少なくともVICS情報についてはこれが実現できていたわけだ。

では、この新たなVICSセンターが提供するプローブ情報は、どうやって受信できるのか?

受信だけなら、VICSに対応したカーナビであればすべて対応できる。

従来のVICS情報は実線で表示され、プローブ情報は破線で表示する(機種によって表示方法が異なる場合もある)。少なくとも表示は可能なので、提供開始日の2022年7月4日以降はいつの間にか「交通情報が増えた!」ことを実感するはずだ。

ただ、このプローブ情報をルート探索に反映するには条件がある。それはカーナビが「VICS WIDE(ビックス・ワイド)」に対応していることが必要なのだ。

変わっていくクルマ 渋滞回避のこれから

「VICS WIDE」は2015年4月から提供されている新世代のVICS情報で、最大の特徴は伝送容量が従来比で約2倍に拡充されたこと。

火山情報・大雨情報など緊急情報の提供もある。

道路交通情報が、カーナビに正しく配信されているかを管理するVICSセンターの監視センター。
道路交通情報が、カーナビに正しく配信されているかを管理するVICSセンターの監視センター。    AUTOCAR JAPAN

これにより、最も普及しているFM多重放送でも一般道での渋滞回避を実現できるようになったのだ。つまり、今回のプローブ情報を使った渋滞回避も、同じようにVICS WIDEに対応している必要があるわけだ。

一方、近年普及しているディスプレイオーディオ(DA)でこの情報は受信できるのか?

もちろん、DA単体ではカーナビ機能を備えていないので受信できないのは言うまでもない。VICS WIDEに対応しているかどうかは、組み合わせたアプリに依存することになる。

ただ、各社とも独自にプローブ情報を収集していることもあり、情報の精度ははっきりと断言はできないが情報は比較的豊富だ。その意味ではVICS WIDEにこだわる必要はないかもしれない。

「渋滞を回避して目的地に効率よく着きたい!」

これは多くのドライバーにとって永遠の課題解決のテーマであることは間違いない。これまでも様々なトライアルは繰り返されてきたが、中でもプローブ情報は各社が独自に収集してきた、いわば“資産”でもある。

それがVICSセンターの仲介によって、その情報がようやく束ねられることとなった。これによって交通情報の精度は間違いなく向上した。

これから先、展開される自動運転の時代にもこうした取り組みは良い結果をもたらすだろう。今後のVICSセンターの取り組みに期待したい。

記事に関わった人々

  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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