アルピナの系譜を継ぐ99台 ボーフェンジーペン・ザガート(2) 一族の哲学がMモデルと融合 伝統を重んじた未来へ

公開 : 2026.06.19 18:10

アルピナ創業家によるボーフェンジーペン・オートモービルの第1弾、ザガート。BMW M4 コンペティション・コンバーチブルを土台に、無二のグランドツアラーが誕生しました。UK編集部が試乗します。

BMW M4をベースに610psと71.2kg-m

アルピナと別れを告げたボーフェンジーペン家がリリースした、ボーフェンジーペン・ザガート。ダッシュボード上には、ベースとなったBMW M4 コンペティション・コンバーチブルと同じ、カーブを描いたモニターパネルが鎮座している。

優美なスタイリングやインテリアと調和しにくい、その黒い平面へ立体感を与えるべく、控えめなカウルが被されている。ステアリングホイールの裏には、アルミ製のシフトパドル。ゴムで覆われたM4のアイテムより、感触は遥かに良い。

ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)
ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)

3.0L直列6気筒エンジンを始動すると、ややこもった音色のサウンドが盛大に放たれる。その音質は明らかにBMWのS58ユニットのものだが、アクラポビッチ社製のチタンエグゾーストらしい、ザラついた高音が重なる。

吸排気系と電子制御の改良で、最高出力は541psから610psへ上昇。最大トルクも、66.1kg-mから71.2kg-mへ太くなった。だが前後のトルク分配は、通常のM4 コンペティションと変わらない。Mディファレンシャルや、スタビリティ・コントロールも。

一族の哲学が融合した無二のグランドツアラー

ザガートの車重は1875kgあるが、パワーウエイトレシオは325ps/tで、ポルシェ911 カレラGTSを凌駕する。四輪駆動で、0-100km/h加速は3.3秒とのこと。少し、控えめな計測値に思える。

ダンパーはビルシュタイン・ダンプトロニックで、スプリングはアイバッハの専用開発品。スタビライザーは、細身のものへ変更されている。M4由来の3段階のダンパー・モードは継承されているが、より能力の幅を広げるべく、チューニングを受けている。

ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)
ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)

アルピナの伝統を重んじつつ、現CEOのアンドレアス・ボーヴェンジーペン氏は、Mモデルを素材に魅力を引き出したといえる。だが彼は、M4が完璧だとも表現している。ドライブトレインやシャシー、冷却系の強化は不要だったという。

果たして、一族の哲学が融合したザガートは、無二のグランドツアラー。よりリラックスした、二面性あるMモデルのように仕上がっている。

右足を傾けた瞬間に顕になる驚異的な速さ

オーストリアの、ザルツブルクリンク・サーキットへコースイン。路面は呆れるほど荒れているが、右足を傾けた瞬間に驚異的な速さが顕になる。ここを250km/h以上で疾走できるとすれば、安定性の高さも間違いないだろう。

しなやかなサスペンションは、ストロークの長さを実感させる。ホイールが受ける衝撃も、軽減されている。操縦性はよりニュートラルで、テールスライドは穏やかだ。

ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)
ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)

コーナーでは予想以上に上下動が大きく、ステアリングホイールは、より意欲的に回す必要がある。しかし加減速時の挙動は安定し、全体的な重厚感と相まって、トルクフルなグランドツアラーというコンセプトが理想的に具現化されている。

ベースはM4 クーペではなく、コンバーチブルなため、僅かにボディ剛性の限界が垣間見れる。優雅なダブルバブルルーフとの、トレードオフといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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