センセーショナル・スーパーカー『フェラーリ296スペチアーレA』(2) 圧倒的なトルク感も、明らかに欠ける燃焼のドラマ

公開 : 2026.06.19 11:50

フェラーリ『296GTB』、『296GTS』の高性能版となる『296スペチアーレ』、『296スペチアーレA(アペルタ)』をUK編集部が取材します。パワーウエイトレシオ1.69kg/psを実現したそのパフォーマンスとは?

意図するところを見事なまでに表現

基本的なインフォメーションを再確認しながら身を委ねた『フェラーリ296スペチアーレA』のコックピットには、まさにこのモデルの意図するところが見事なまでに表現されていた。

低く設計されたダッシュボードやドアパネルにはレザーの代わりに、これも軽量なアルカンターラが広く採用されており、固定式のバックレストと切り欠きのあるクッションを備えた、あたかも骨組みのようなバケットシートのホールド性は抜群。かつ長距離走行でも耐え難いほど不快というわけではない。

フェラーリ296スペチアーレA
フェラーリ296スペチアーレA    AUTOCAR

マラネロのデザイナーが好むフライングバットレススタイルのリアデッキデザインは確かに美しいが、実用的な観点から指摘するのならば後方の視界に悪影響を及ぼすことは否定できない。

フロアにはカーペットは敷かれておらず、その代わりにアルミニウム製のパネルが備わる。靴が濡れていると滑りやすく、逆に乾いていると引っかかりやすいのが気になる。

ステアリングホイールのスポークには、誤って触れても反応してしまう静電容量式のスイッチではなく、物理スイッチがレイアウトされおり、その機能性は十分に満足できる。

カーボンパネル張りのドアには収納スペースは一切ない。荷物はシートの後方や、スーパーカーとしては十分な広さを持つフロントのトランクに収めることになる。

鋭く官能的なサウンドが単純に欠けている

エンジンをスタートさせる時。それは伝統的にハードコアの極みともいえるキャラクターを与えられたスーパーカーが、最も威圧的にその存在を主張する瞬間ともいえるだろう。

だが296スペチアーレAは、必ずしも刺激的なサウンドでそれを見る者を湧き立たせるモデルではない。多くの先代モデルが持っていた魅惑的であり、また時には威圧的な脅威が混じり合ったあの雰囲気を、完全には醸し出せていないのだ。

フェラーリ296スペチアーレA
フェラーリ296スペチアーレA    AUTOCAR

たとえ最初にドライブモードを『パフォーマンス』や『クオリファイング』にセットすることを忘れていなくても(そうでなければ、このPHEVのスーパーカーのエンジンはスタートしないかもしれない)、マラネロ製の120度V型6気筒ツインターボエンジンには、鋭く官能的なサウンドが単純に欠けている。

もちろんフェラーリは、この296スペチアーレAでは3D音響シミュレーションシステムを活用して、そのサウンドをより強調することを試みているのだが、それでもなお296スペチアーレAの音感は優しすぎるように聞こえてしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳 / 編集

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王(超王)」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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