BMW製4.4L V8搭載 ランドローバー・レンジローバー P530へ試乗 イチオシはディーゼル

公開 : 2022.09.11 08:25

伝統のジャガー製からBMW製へ置き換わることになったV8。英国編集部がフラッグシップの仕上がりを確かめました。

BMWのV8 4.4Lツインターボを搭載

英国でも、伝統が絶たれる時はある。AJ型と呼ばれるV型8気筒ガソリンエンジンは、1996年のジャガーXJを皮切りに、レンジローバーのトップグレードにも長年搭載されてきた。

これまでスーパーチャージャーがドッキングされたり、V型6気筒になるべく、シリンダー2本が削られたりもした。ジャガー・ランドローバー(JLR)は時代へ合致させるために、あらゆる手段を講じてきた。

ランドローバー・レンジローバー P530 ファーストエディション(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー P530 ファーストエディション(英国仕様)

それでも環境規制への対応は簡単ではなく、段階的にAJ型エンジンの搭載モデルは姿を消していく運命にある。その変化を真っ先に受け入れたのが、最新のレンジローバー。今回試乗したP530には、BMWのV8 4.4Lツインターボ・エンジンが採用されている。

このN63B44型と呼ばれるドイツ生まれのユニットへ、AJ型から順次置き換わっていく。BMWの7シリーズやX7、5シリーズのM550iで既に定評を得ているが、新しいレンジローバーとの愛称はいかがだろうか。

発進させてみると、低速域では小さくV8エンジンらしい唸りが車内へ聞こえてくる。負荷や回転数が高まるとともに、文化的な力強いサウンドへ変化していく。

レンジローバーの車重はショートホイールベース(SWB)版でも2.5tを超えるが、最高出力は530psもあるから、瞬発力にまったく不足は感じられない。ストレスのない、ゆとり溢れる贅沢な印象を与える。

広々で上質な車内 空気に浮いた乗り心地

組み合わされる8速ATは、適切なギアをキビキビと選んでくれる。赤信号からの発進時に、やや強めの変速ショックが伝わることもあったが、印象を大きく悪くするほどではないだろう。翌日に再び乗ってみると、再発はしなかった。

V8エンジンを除いて、P530の印象は前回試乗した直列6気筒ディーゼルのD350と大きくは違わない。広々とした車内は上質に設えられ、走行中は非常に静か。メリディアン社製サウンドシステムの音質を、心ゆくまで堪能できる。

ランドローバー・レンジローバー P530 ファーストエディション(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー P530 ファーストエディション(英国仕様)

新型のレンジローバーではエアサスペンションが標準装備で、路面の大きなコブやうねりを滑らかに均してくれる。まさに、空気に浮いたような乗り心地に浸れる。今回の試乗車には、23インチという大きなホイールが履かされていたが。

ただし、橋桁の継ぎ目や細かな凹凸は少々苦手。大きなホイールも影響して、シャシーへ僅かな震えを伝えていた。

1インチ大きいだけとお考えかもしれないが、23インチともなればバネ下重量が大きく違う。レンジローバーを上品に乗りたい場合は、22インチを選んだ方が賢明だろう。

燃費はあまり褒めにくく、高速道路のクルージングで9.6km/Lほどだった。市街地に入れば、更に悪くなるのはいうまでもない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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