「フェラーリ275GTB」 なぜ、再び値上がりしたのか? オークションの動向と人気のワケ

公開 : 2022.09.09 05:45

60年代のフェラーリを代表する「275GTB」は、値上がり中。相場の基準となるモントレー・オークションに3台が登場。落札金額と、価格の動向を解説します。

フェラーリ275GTBとは?

クラシック・フェラーリのなかで1960年代を代表する存在が「275GTB」である。

流麗なスタイリングと280psを発揮する12気筒エンジンという組み合わせは最強で、誕生以来世界中で高い人気を誇り、GTカーの象徴であり続けている。

北米のRMサザビーズ・モントレー・オークションに出品された「フェラーリ275GTB/C」。
北米のRMサザビーズ・モントレー・オークションに出品された「フェラーリ275GTB/C」。    RMサザビーズ

それだけに2022年の現在も、オークションでは高額で落札されている。275GTBが人気を集めている理由と、最近の価格動向を調べてみた。8月のモントレー・オークションの結果とともにご紹介しよう。

1960年代初頭のフェラーリは、「250GT SWB」と進化型の「250GTO」でGTレースを闘い、一般オーナー向けに豪華版の「250GT/Lルッソ」を用意していた。

後年レース用と一般オーナー向けGTを統合することになり、開発されたのがパフォーマンスと快適性を両立させた275GTBだ。またGTBを謳う最初のモデルでもある。

エンジンは250系で実績のある3.0Lコロンボ・ユニットを拡大し280psを発揮するティーポ213型3.3Lユニットを搭載。モデル名の「275」は1気筒あたりの排気量を示す。

機構的には、優れた前後重量配分を実現するトランスアクスルをGTで初めて実現し、4輪独立懸架と4輪ディスク・ブレーキを採用するという先進性を備えていた。

まずショートノーズが登場し、1965年からはロングノーズに変わる。1966年になると4カム=DOHCエンジンに進化し、モデル名も275GTB/4となる。

市販版275GTBの生産台数は、ショートノーズが236台、ロングノーズが206台、GTB/4は331台、合計で773台と当時のフェラーリの中でベストセラーとなった。

値上がりの時代へ 価格の推移

275GTB最大のチャームポイントは、ピニンファリーナによるロングノーズ、ショートデッキという高性能GTカーを象徴する流麗なスタイリングにある。

そして官能的なサウンドを奏で、パワフルな12気筒エンジンが後押しする。当時のライバルは6気筒や8気筒がほとんどで、275GTBは圧倒的な優位性を持っていたのだ。

オークションバブル期には365万ドルまで急騰した「フェラーリ275GTB/4」(写真は8月のモントレーオークション出品車両)。
オークションバブル期には365万ドルまで急騰した「フェラーリ275GTB/4」(写真は8月のモントレーオークション出品車両)。    RMサザビーズ

275GTBは誕生して以来、いつの時代も高い人気を誇ってきた。新車時はもちろんのこと、現在も「決めの1台」として評価されている。

275GTBの21世紀初頭の取引額は、不人気な12気筒2+2モデルが数万ドルだったのに対し、275GTBは20~30万ドルと高額だが、まだ手が届く範囲にあった……。

それが、2004年頃から値を上げ、すぐさま100万ドルを突破。

リーマン・ショックで一時下落したものの、2011年には100万ドル超えの存在に戻っている。

また人気の250GT SWBが高騰して800万ドル超えという手が届かぬ存在になってしまう。そこで愛好家が値ごろな275GTBに注目したことも、値上がりの要因の1つとなった。

2014年からのオークションバブル期になるとショートノーズが200万ドル、ロングノーズで275万ドル、GTB/4は365万ドルと急騰。その後2~3割ほど下げて沈静化したように見えた。

余談だが、20世紀末には250GTOが300万ドル強で買えた。20年で275GTBがそれ以上の額になったが、250GTOは今や5000万ドルでも買えないほど上昇してしまった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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