今でも強烈なウェポン フェラーリ308 GTB レーサー(2) 左側へ鎮座する赤い消化器

公開 : 2025.11.15 17:50

FRPボディの308 GTB レーサー パワフルだったキャブの初期型 オリジナル然な内装 今でも強烈なウェポン 最も多くのレースを戦ったフェラーリと一目置かれる1台を、UK編集部がご紹介

最も多くのレースを戦ったフェラーリ

最も多くのレースを戦ったフェラーリとして一目置かれる、ロバート・プーリン氏がオーナーの308 GTB ヴェトロレジーナ。1977年にナンバー登録され、1980年にジョン・スウィフト氏が購入。すぐに、クラブレーサーへチューニングされたらしい。

といっても、装備的にはロールケージの実装と、消化器が積まれた程度。その仕様で37年間、彼は英国のレースイベントへ参戦した。マラネロ・フェラーリ・チャレンジを経て、クラシックカーの年代になると、フォーミュラ・クラシック選手権などへ挑んだ。

フェラーリ308 GTB 「ヴェトロレジーナ」レーサー(1975年式)
フェラーリ308 GTB 「ヴェトロレジーナ」レーサー(1975年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ベルギーのスパ・フランコルシャンや、オランダ(ネザーランド)のザントフォールトでも活躍。ゼッケンは11番と決まっていた。現オーナーも、この伝統は守っている。

半世紀後も優れた能力を発揮できているのは、スウィフトの技術的な理解度の深さによるものだろう。「すぐにタイムは狙わず、すべての温度を温め、他車の流れを読んでラインを確保できてから攻めるタイプですね」。と、2004年に彼は説明している。

高圧縮比化とスポーツマフラーで300馬力以上

プーリンが購入したのは、2019年。クラシック・フェラーリの壮観なコレクションを有する彼は、この308 GTBのリフレッシュやメンテナンスも徹底してきた。

ショックアブソーバーは、減衰力を再調整。フォーミュラ・クラシックのモディファイド・クラスへ出場すべく、エンジンマウントやサスペンション・ブッシュなどがアップグレードされている。リアのアンチロールバーは、MGメトロ 6R4用だという。

フェラーリ308 GTB 「ヴェトロレジーナ」レーサー(1975年式)
フェラーリ308 GTB 「ヴェトロレジーナ」レーサー(1975年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

5速MTとリミテッドスリップ・デフは、ストックのまま。3.0L V8エンジンは圧縮比が8.8:1から11.0:1へ高められ、スポーツマフラーとの相乗で、最高出力は300馬力以上とのこと。ブレーキパッドも強化されている。

ホイールは、17インチのスピードライン・コルセ。タイヤは、素晴らしいグリップ力を発揮するロードタイヤ、ヨコハマ・アドバンを履く。1970年代以来、14インチのクロモドラ・ホイールと、ミシュランXWXタイヤは履いていないはず。

オリジナル然とした内装 親しみやすい挙動

ロールケージを避けて、スパルコのバケットシートへ身体をはめると、オリジナル然とした内装へ気付く。センターコンソールには、エアコンの操作パネルが残る。それでも、ダッシュボードにはヒューズボックスが露出。助手席はなく、消化器が鎮座する。

3スポークのモモ社製ステアリングホイールは純正品だが、メーターパネルの油圧計は追加品。プーリンは、油圧が70psiへ上昇するまで待って欲しいと話す。エンジンブロックとヘッドは、ストックのまま。状態維持には、丁寧な配慮が欠かせない。

フェラーリ308 GTB 「ヴェトロレジーナ」レーサー(1975年式)
フェラーリ308 GTB 「ヴェトロレジーナ」レーサー(1975年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

グレートブリテン島中東部にある、小さなヘアウッド・スピード・ヒルクライムを走るのは40年ぶり。コース長は1440mで、狭く、目がくらむようにコーナーが続く。しかし308 GTBは親しみやすく、何度か走っている内に、すっかり夢中になってしまった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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