戦い続けた「ヴェトロレジーナ」 フェラーリ308 GTB レーサー(1) イメージ刷新の耐久性
公開 : 2025.11.15 17:45
FRPボディの308 GTB レーサー パワフルだったキャブの初期型 オリジナル然な内装 今でも強烈なウェポン 最も多くのレースを戦ったフェラーリと一目置かれる1台を、UK編集部がご紹介
157台だけ作られたFRPボディの右ハンドル
メタリック・ブルーのボディへ映える、ホワイト・ホイール。ロバート・プーリン氏が所有するフェラーリ308 GTB レーサーは、グレートブリテン島中東部、ノース・ヨークシャー州のヒルクライム・コースが良く似合う。
一見するとハードコアなフェラーリだが、実は公道走行可能。今日は、ナンバープレートが外されているが。ラインオフから50年が過ぎ、走行距離は16万km。それでいて、パワートレインの殆どの部品はオリジナルだという。

この308 GTBは、シリアスなコース上で37年間も競技人生を送ってきた。世界で最もレースを戦ったフェラーリとして、マニアからは一目置かれている。
端正なフォルムは、カロッツェリア・スカリエッティ社が成形したもの。308 GTBの発売直後の約1年だけ、説によるが712台か808台が作られた、グラスファイバー(FRP)製のボディをまとう。右ハンドル車は、157台だけだった。
最もパワフルだったキャブレターの初期型
1975年のフランス・パリ・モーターショーで発表された、バンク角90度の3.0L V8エンジンをミドシップする308 GTB。フロントのボンネット部分のみがアルミニウム製で、結果として、フェラーリ史上唯一のFRPボディとなっている。
金属を用いなかった理由は、軽量化。同社が主張した乾燥重量は1090kgで、スチール製のチューブラーフレームにV8エンジンを積んだモデルとして、異例の軽さといえた。2.0L 4気筒エンジンのロータス・エスプリより、200kgほど重かったが。

排気ガス規制などへ準じるため、1985年の生産終了まで308 GTBはアップデートを繰り返すが、最もパワフルだったのは初期型。クワッドカムのヘッドを載せ、欧州仕様では258ps/7700rpmと28.8kg-m/5000rpmを発揮した。
インジェクション化される1981年まで、ユニットの中央に組まれたのは4基のウェーバー・キャブレター。オイル循環は搭載位置を低くできるドライサンプで、操縦性と高速域での安定性を高次元で得ていた。
僅か1年でスチール製ボディへ変更
マニアの間では、イタリア語でFRPを意味する「ヴェトロレジーナ」と呼ばれる最初期型だが、1976年以降のスチール製ボディと見た目の違いは殆どない。ルーフパネルとフロントピラーの接合部が、わずかに異なる程度といえる。
当時のAUTOCARは、プラスティック臭さがないことにも触れ、仕上がりを高く評価している。「完成度は素晴らしく、通常とは素材が異なることを殆ど感じさせません」

メカニズムも、基本的にスチール製ボディと変わらない。チューブラーフレームにアルミ製フロアパンがリベットで固定され、リアのバルクヘッドは溶接。ダブルウイッシュボーンのサスペンションや、ベンチレーテッド・ディスクのブレーキも同じだ。
スチール製ボディへ1年で変更された理由を、ピニンファリーナ社のデザイナーだったレオナルド・フィオラヴァンティ氏は、安定しない品質だったとしている。しかし、フェラーリ側は公式に説明していない。


















































































































