オンとオフの見事な融合 ランドローバー・レンジローバー・スポーツP530へ試乗 3代目へ一新 前編

公開 : 2022.09.19 08:25

最新レンジローバーと多くを共有する、3代目スポーツ。偉業といえるほどの仕上がりだと、英国編集部は評価します。

並行して開発された4代目レンジローバー

真新しいランドローバー・レンジローバー・スポーツの窓を開き、見送る同僚と目的地について言葉をかわす。そのまま閉めずに公道へ進み、最初の50mを確認する。発進時の心地良さに感動してしまった。第一印象のテストは満点だ。

軽くないボディの質量を巧みに包み込み、操作に対する反応は正確で予測しやすい。2分ほどで高速道路へ合流。窓を閉めて加速し、クルージング状態に移る。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)

新しいレンジローバー・スポーツは、恐らくこのクラスで最も静かな車内を実現している。ひと回り大きい兄貴分、レンジローバーに近い洗練性や隔離性が、この3代目にも備わっている。

驚くべき進化に思えるが、ある程度は想定できていた。4代目レンジローバーと3代目レンジローバー・スポーツは並行して開発が進められた。共有する部分は少なくなく、発表時期も数か月しか違わない。

2台の基礎構造は、ランドローバーが新開発したモジュラー・ロンジチューディナル・アーキテクチャーと呼ばれる、縦置きエンジン用のプラットフォーム。主にアルミニウムで構成され、ねじり剛性は従来から35%も高められている。

レンジローバー・スポーツのサイズは、先に登場したレンジローバーより短く低い。といっても、全長は4946mm、全幅は1990mm、全高は1820mmと大差ないが。レンジローバーは順に5052mm、1990mm、1870mmある。

ホイールベースは2997mmで同値。ワイドでロングなSUVだ。

BMW由来の4.4L V8エンジンを搭載するP530

車重の差は寸法より大きい。試乗したレンジローバー・スポーツ P530は、BMW由来の4.4L V型8気筒エンジンを搭載し、最高出力は530psを発揮する。こちらの車重は2430kgだが、レンジローバーの方は同じエンジンで2510kgある。

燃料タンクの容量が80Lなのに対し、レンジローバーが90Lと大きいことも少し影響している。車重は燃料をタンクの90%ぶん補充して計測されるためだ。上下2分割となるテールゲートも重そうに思えるが、占める割合は僅からしい。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)

どちらも、サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアが5リンクのマルチリンク式を採用。ブレーキ制御のトルクベクタリング機能を備え、リミテッドスリップ・デフがリアに組まれる。

電圧48Vで稼働するアクティブ・アンチロールバーと、後輪操舵システムも備わる。この辺りも共通している。

メカニズム的な1番の相違点は、恐らくサスペンションだろう。レンジローバーはシングルチャンバーのエアスプリングで支えるのに対し、レンジローバー・スポーツはデュアルチャンバーで支えられている。より幅の広い動的能力を与えるために。

といっても、目立った違いではない。むしろルックスも含めて、かなり似ているといった方が正しいだろう。先代ほどは、明確な立ち位置の違いが感じられない。スタイリングの印象も同様で、窓を開いて走らせた時のフィーリングも似ていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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