【伝統よりもハンドリング】前作は即完売!ランドローバー・レンジローバー・スポーツSVエディションツーに見る英国車の真価

公開 : 2025.07.17 12:05

2023年に史上最もパワフルでダイナミックなモデルとして登場した、レンジローバー・スポーツSVエディションワン。2025年モデルの限定グレードとして登場したエディションツーを吉田拓生が紹介します。

伝統という言葉で括られがち

今回の主役は『レンジローバー・スポーツSVエディションツー』だ。

クラシック・レンジローバー初期の2ドアモデルやディフェンダーを名乗る前のランドローバー・シリーズ2あたりに憧れる者としては、レンジローバーと速さがうまく結びつかない。しかし、SV(スペシャル・ビークル)と名の付くモデルを試乗する度に、その伸びしろに驚かされていることも確かだ。

取材車はレンジローバー・スポーツSVエディションツー。
取材車はレンジローバー・スポーツSVエディションツー。    神村聖

英国車はとかく『伝統』という言葉で括られがちで、レンジローバーは英国王室御用達として初代の様式を半世紀以上に渡ってきちんと受け継いでいるので、その表現がピタリとあてはまる。

だがドイツ車がエンジニアリング、イタリア車がデザインを特徴とするならば、実際の英国車は伝統よりもハンドリング、もしくはビークルダイナミクスを特徴としていると考えている。

ランドローバーのハンドリングは、ジャガーを長年手がけてきたかの有名なマイク・クロスが統括してきた。2022年に彼が引退してからは、やはり有名な元ハンドリング・バイ・ロータスのマット・ベッカーがその職を担っている。

マットもずいぶんエラくなってしまったので、彼が直接的に作業しているわけではないのかもしれないが、それでもビークルダイナミクスの伝統はしっかりと継承されているはず。さあ、最新のSVはどのような仕上がりを見せてくれるのだろうか?

コワモテだった先代との違い

今回はエディションツーなので、つまりレンジローバー・スポーツSVには当然エディションワンもあった。昨年、世界限定2500台がデリバリーされ、日本向け割り当ての75台は即ソールドアウトしたらしい。

ワンとツーはスペック的にはほぼ一緒。エンジンはBMW M謹製のS63ユニット、すなわち最高出力635psを発揮するV型8気筒ツインスクロールターボを搭載する。つまりランドローバー一族で今最も注目を集めているディフェンダー・オクタと同じだが、搭載はこちら方が早かったことになる。

エンジンはBMW M謹製のS63型、最高出力635psを発揮するV8ツインスクロールターボを搭載する。
エンジンはBMW M謹製のS63型、最高出力635psを発揮するV8ツインスクロールターボを搭載する。    神村聖

足回りに仕込まれた油圧連動式サスペンションシステム、『6Dダイナミクスエアサスペンション』も同様である。だがオクタと違うのは、対向8ピストンのブレンボ製ブレーキキャリパーとカーボンセラミック・ブレーキディスクなど。

さらに試乗車には、カーボン製の23インチホイールも装着されていた。ボンネットやエアロ等がカーボン製でも驚かないが、ホイールの場合は色々な意味でドキドキさせられる。

ホールド性のいいシートに身を任せ、走りはじめた第一印象は、巨大で薄肉なタイヤの見た目と符合しなかった。いい意味で、ノーマルのレンジローバー・スポーツのようなまろやかな乗り心地なのである。

先代に用意されていたSVRというモデルのゴワゴワとしたドライブフィールと比べると、結構な違いがあった。アシの硬さだけでなく、先代は5LスーパーチャージドV8の咆哮もアイドリングレベルから凄かったのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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