オンとオフの見事な融合 ランドローバー・レンジローバー・スポーツP530へ試乗 3代目へ一新 後編

公開 : 2022.09.19 08:26

最新レンジローバーと多くを共有する、3代目スポーツ。偉業といえるほどの仕上がりだと、英国編集部は評価します。

突出した乗り心地や外界からの隔離性

一層の上級志向を狙った3代目ランドローバーレンジローバー・スポーツ。それを受けて、英国価格は8万325ポンド(約1325万円)からに設定された。

プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のP510eは、10万8600ポンド(約1791万円)。今回試乗した4.4L V8エンジンを搭載するP530は、11万6190ポンド(約1917万円)からとなる。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)

レンジローバーは、英国では年齢を重ねた大地主が乗るようなSUVといえる。レンジローバー・スポーツは若々しく、経営者が会社へ乗り付けるようなイメージ。週末にはクルマで妻と買い物に出かけたり、夕方にはジムへ通ったりする人が想起される。

オンロードの走破性や快適性、SUVとしての実用性といった複合的な能力の組み合わせが、絶妙なポジショニングを生んでいる。ライバルのポルシェカイエンに乗ると、真っ先にスポーティなオンロードモデルのように感じる。SUVらしさは、その次だ。

一方でレンジローバー・スポーツの乗り心地や外界からの隔離性は突出しており、このクラスに太刀打ちできるモデルはない。レンジローバーの威風堂々とした、蛋白でクールな雰囲気がそのまま醸し出されている。

車載スピーカーが、車内へ届くノイズを打ち消す逆位相の音波を鳴らす。家族でのドライブ中にハンバーガーショップへ行こうと助手席のパートナーへささやいても、リアシートの子供にも筒抜け。不意に喜ばせることはできない。それくらい静か。

走行時の安定性も素晴らしい。長距離移動にもうってつけ。V8エンジン版でもPHEV版でも、ドライブトレインの種類は関係ない。

カーブの続く道を巧みに駆け抜ける

続いて試乗したレンジローバー・スポーツのPHEV、P510eでは、3.0Lの直列6気筒ガソリンエンジンに駆動用モーターを結合。システム総合で510psを発揮する。CO2の排出量は18-20g/kmが主張される。

電気の力だけで最大112kmも走れるとカタログ上ではうたわれるが、ランドローバーによれば、現実的な環境では80km以上ということだった。PHEVには、出力が控えめなP440eも設定される。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ(欧州仕様)

車重はV8エンジンを積むP530より重く、2735kgもある。それでも、カーブの続く郊外の道を巧みに駆け抜ける。ボディサイズの大きいSUVとしては、感心するほどに。

コーナリング時は若干大きめにボディロールが生じるものの、1度スタンスが決まれば落ち着きは乱さない。大きな自信を抱いたまま出口を目指せる。

衛生と通信するナビのデーターを利用し、前方にあるカーブを予測。シャープな身のこなしが得られるよう、レンジローバー・スポーツは自動的にシャシーを調整してくれる。

ポルシェ・カイエンの方が、よりフラットにコーナーを抜けていく。ドライバーの気持ちも高ぶらせてくれる。しかし、SUVに求める内容としてレンジローバー・スポーツでもまったく不満はない。

V8エンジンで車重の軽いP530の方が、より軽快な足取りを楽しめる。とはいえ2430kgあるから、比較すれば、という程度の違いでしかない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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