まるで公道を走るフォーミュラカー BACモノ Rへ試乗 30台限定の347ps 前編

公開 : 2022.09.20 08:25

最近まで公道で世界最強だったNA 4気筒

通常のモノと同様に、シャシーはスチール製パイプを組んだチューブラーフレーム。エンジンは英国のチューニングガレージ、マウンチューン社がモノ Rのために手を加えた、2.5Lの自然吸気4気筒を搭載する。

シリンダーはボアアップされ、短いコンロッドが組まれている。クランクシャフトも専用の鍛造品で、高回転域まで自由に回転する特性を得ている。

BACモノ R(英国仕様)
BACモノ R(英国仕様)

コクピットの左後方には、ロケットのようなラムエア・インダクションポッドがタダモノではない存在感を放つ。これも、通常のモノには装備されていない。

モノ Rが搭載するエンジンは、最近まで公道用としては排気量当たりで世界最強の自然吸気ユニットだったそうだ。最高出力347psを8400rpmで発生する。この記録を塗り替えたのは、アストン マーティン・ヴァルキリーだった。

驚いたことに、サーキットへフォーカスされたピレリ・トロフェオRも、モノ R専用のタイヤらしい。BACのように大きくはない規模のメーカーが、独自配合のコンパウンドを準備することは珍しい。

フォーミュラカーのような運転姿勢

中年太り気味の筆者の身長は、190cm近くある。平均的な身長のドライバーなら問題ないはずだが、運転席に充分な空間があるのか当初は心配だった。ところが、モノ Rは無事に筆者を包んでくれた。罪悪感がなかったわけではないが。

コクピットは、フォーミュラカーのようなレイアウトが取られている。足をシートの前方へ投げ出し、上半身は45度より大きく倒れる。軽く曲げた膝の高さは、胸のあたり。前方を見るには、首を前に倒す格好になる。

BACモノ R(英国仕様)
BACモノ R(英国仕様)

一般的なドライビングポジションとはまったく異なり、筆者の場合、アライのヘルメットが鎖骨に当たってしまった。1度座ってしまえば快適と呼べるが、コクピットに余計な空間は残されていない。6点ハーネスを締めるのに苦労するほど。

乗降時には、ステアリングホイールを外す必要がある。位置が決まったら、もとに戻すのをお忘れなく。景色の良い高原の駐車場まで仲間とドライブを楽しむプロセスとしては、いささか仰々しい。

先述の通り、BACはもっと気軽にモノへ乗って欲しいと考えているわけだが、乗降性は見直した方が良いだろう。現状では、ちょっとした障壁だと思う。

モノ Rは着座位置も低く、車高も低い。カーボンファイバー製のフロントスプリッターは、一般的な速度抑止用のコブ、スピードバンプでも擦りそうに見える。歩道の段差に乗り上げる場合は、ノーズリフト機能が備わらないから注意が必要だ。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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