まるで公道を走るフォーミュラカー BACモノ Rへ試乗 30台限定の347ps 前編

公開 : 2022.09.20 08:25

軽量なシングルシーターで347psのモノ R。シリアスなスポーツカーを、英国編集部が公道で評価しました。

公道を走れることに驚くBACモノ R

多くの市民は、ワイルドなBACモノ Rが公道を走っていることに驚く。グレートブリテン島の中西部、リバプールに拠点を置くBAC社によれば、購入を考えている人ですら当初は戸惑うこともあるという。

確かに、殆どタイヤはむき出しで、ボディ中央のコクピットにはルーフどころかフロントガラスもない。サーキット専用の、小さく軽量なスペシャルモデルのようにしか見えない。ドライビングフィールも、レーシングカーそのものだ。

BACモノ R(英国仕様)
BACモノ R(英国仕様)

このクルマで、週末に北部の湖水地方でのんびり過ごそう、と考える人はいないだろう。市街地を走れば、多くの人が目を丸くしてこちらを見てくる。

そんな受け止められ方を、BACは変えたいと考えている。「わたしたちのクルマは、スポーツバイクのように乗れて、普段使いもすることができます。いつでも、どんな道でも楽しめますよ」

英国は日本のように雨が多く、入り組んだ市街地と狭い郊外の道が混在している。ぐずついた空模様の下でスーパーマーケットまで運転し、駐車場にクルマを停めて、低脂肪牛乳を買ってこれるだろうか。

今回キーをお借りしたのは、BAC最新のモノ。モデルラインの頂点に位置し、特別でパワフルなモノ Rだ。発表されたのは2019年のグッドウッド・フェスティバルと、少々時間が経っているけれど。

圧倒的に獰猛なマシンを求めるドライバーへ

モノ Rは30台の生産が予定されており、約20台の納車が済んでいる。実際のところ、正式にオーダーを受け付ける前から完売状態だったという。

BACの担当者は、1・2台のキャンセルが出る可能性があると話す。もしこれをお読みになって食指が動いたら、早めに連絡された方がいい。シリアルナンバーが29か30のモノ Rのオーナーになれるかもしれない。

BACモノ R(英国仕様)
BACモノ R(英国仕様)

オリジナルのモノ自体は10年以上前から生産されており、過去に大きなデザインのアップデートを1度受けている。このモノ Rは、さらにそれのアップデート版となり、内容としては第3世代に当たる。

モノの全長は4007mm、全幅は1836mm、全高は1085mmとコンパクトで、車重は約600kg。圧倒的に獰猛なマシンを求める、特別なドライバーを満たすために開発された。相当に要求が高い人でも、これで不満を漏らすことはないだろう。

モノ Rでは全面的な軽量化が図られており、結合カーボン素材、グラフェンを用いたパネルでボディは構成されている。ブレーキディスクはカーボンセラミックで、エグゾーストはチタン。フロアもカーボンファイバー製だ。

プッシュロッドで動くダンパーは、オーリンズ社製の調整式。より引き締められ、車高も落としてある。ホイールのオフセット量も見直し、一層シャープな操舵性を実現させたという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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