ベントレー・ベンテイガEWB試乗 ベントレー流+180mmのおもてなしと走りのレシピ

公開 : 2022.09.28 08:01

「快適さ」増す 「ロング」の恩恵

ベンテイガEWBで進化していたのは、後席の居住性だけではなかった。

まず、キャビンの静粛性が改善され、タイヤが発する「ゴーッ」というロードノイズがこれまで以上に小さくなった。

ベントレー・ベンテイガEWBの乗り心地は、ソフトな印象がより鮮明になったと筆者。
ベントレー・ベンテイガEWBの乗り心地は、ソフトな印象がより鮮明になったと筆者。    ベントレー

もちろん、従来のベンテイガも決してロードノイズがうるさかったわけではないが、EWBのほうが静かなことは間違いない。

聞けば、騒音レベルを下げるために遮音材をふんだんに使ったという。

乗り心地の変化も見逃せない。

既存のベンテイガは、グランドツアラーとしてのベントレーらしく、乗り心地はソフトななかにも明確な「芯の強さ」のようなものが認められたが、EWBではこの「芯の強さ」が遠のき、ソフトな印象がより鮮明になった。

こうした傾向は、前席だけでなく後席でも感じられるもので、標準ホイールベース仕様では乗り心地に多少のガマンが強いられたスポーツ・モードでも、EWBの後席であればベントレー推奨のBモードと変わらないくらいの快適性が味わえる。

聞けば、EWBでは電子制御式エアサスペンションの設定も見直されたようだが、それとともに、ホイールベースが長くなったことで足まわりの入力地点が乗員から離れ、これによって衝撃の度合いそのものが小さくなったことも大いに影響しているように思う。

剛性が効く 正確なハンドリングは健在

ハンドリングはどうか?

一般的にいって、ホイールベースが長くなればハンドリングがダルになるのは自然の摂理。

ベントレー・ベンテイガEWB
ベントレー・ベンテイガEWB    ベントレー

しかも、世にあるロングホイールベース版のなかにはボディ剛性が下がっているものも少なからずあり、このためステアリングレスポンスはさらに低下。

くわえて、ハンドリングのあいまいさも悪化するといった具合で、ワインディングロードが苦手なロングホイールベースは少なくない。

しかし、ベンテイガEWBは違う。

まず、ロングホイールベース版にありがちなボディ剛性の低下がほとんど認められない。

このため、ベンテイガの正確なハンドリングは健在。

しかも、ホイールベースが180mmも延長されたのに、ステアリングレスポンスが標準ホイールベース版とまるで変わらないように思えたのは驚きだった。

その理由を、試乗会にいあわせたエンジニアに訊ねたところ、「ベンテイガEWBは新たに4WSを搭載し、低速域では後輪を逆相に操舵してレスポンスを改善しています」との回答を得たが、実際には低速域だけでなく、中高速域でも良好なステアリングレスポンスが楽しめる。

この辺は、ボディ剛性の低下を防ぐとともに、エアサスペンションやアクティブアンチロールバーの設定を細かく見直した成果だろう。

V8 4.0Lツインターボエンジンのパフォーマンスにもまったく不満を覚えなかったベンテイガEWB。

乗り心地やハンドリングで失った部分が見当たらず、スタイリング面でも間延びした印象を与えないEWBが、今後はベンテイガの主力モデルに躍り出るような気がして仕方なかった。

ベントレー・ベンテイガEWBのスペック

価格:2675万円
全長:5305mm
全幅:1995mm
全高:1739mm
ホイールベース:3175mm
車両重量:2514kg
パワートレイン:V8気筒3996ccツインターボ
最高出力:550ps/5750-6000rpm
最大トルク:78.5kg/2000-4500rpm
ギアボックス:8速DCT

ベントレー・ベンテイガEWB
ベントレー・ベンテイガEWB    ベントレー

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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