モデル最適解は63kWhのFF 日産アリア e-4ORCE 87kWhへ英国試乗 最大トルク2倍

公開 : 2022.10.15 08:25

日産アリアのツインモーター版となるe-4ORCE。スイートスポットはエントリーグレードだと、英国価格は評価します。

四輪駆動の87kWh版では航続500kmに

AUTOCARの英国編集部が日産アリアへ初試乗したのは、2022年7月。その時はシングルモーターの前輪駆動版だったが、このバッテリーEV(BEV)のスイートスポットのように感じられた。

アリアとしてはエントリーグレードになるが、最高出力218ps、航続距離402kmと、スペックとしても好バランス。スタイリッシュな見た目に上質なインテリア、不足ない動的能力を兼ね備え、とても印象の良いクロスオーバーだった。

日産アリア(欧州仕様)
日産アリア(欧州仕様)

そんなアリアだが、BEV用モジュラー・アーキテクチャの汎用性の高さを活かし、日産は早速バリエーションを拡充した。今回ご紹介する2種類だ。

駆動用バッテリーの容量は63kWhから87kWhへ拡大されており、日産がe-4ORCE(イーフォース)と名付けた四輪駆動版では、リア側に2基目の駆動用モーターを搭載する。このe-4ORCEの最高出力は総合で306ps、航続距離は500kmがうたわれる。

ちなみに、試乗した日は秋口の涼しい天気で、メーターモニター上には370kmの航続距離が表示されていた。四輪駆動とせずに87kWhの駆動用バッテリーを選択することも可能で、その場合の航続距離は532kmと、アリアでは最長になる。

最大トルク2倍 車重増で操縦性に影響

今回の試乗では、前輪駆動版と四輪駆動版のアリアを直接比較することができたが、正直なところ明確な違いは体感できなかった。リア側の駆動用モーターは、確かにパワーとトルクを追加してくれているが、めざましく勢いが良いというわけではない。

特に最大トルクはシングルモーター版の2倍、 61.1kg-mと太いうえ、トラクションも改善されている。それでも、試乗コースとなったデンマークの濡れたアスファルトを、前輪駆動版も不満なく掴んでいた。

日産アリア(欧州仕様)
日産アリア(欧州仕様)

ツインモーターで馬力が増えて、大容量バッテリーで車重が増えても、前輪駆動のアリアが備える洗練性を四輪駆動版は受け継いでいる。e-ペダルと呼ばれる、アクセルペダルだけで発進から停止までまかなえるワンペダル・ドライブも、直感的で運転しやすい。

一方で、車重増によって操縦性には影響が生じている様子。常時安定していて不安感なく運転できるものの、反応にはダルさが伴い、クルマとの一体感は薄められている。やや曖昧なステアリングホイールの感触が、さらに印象の足を引っ張っていた。

スポーツ・モードを選ぶと、操縦に対するレスポンスは引き締められる。しかし、甲高い唸りが聞こえるようになるため、比較的短時間で別のモードを選びたいと思ってしまった。乗り心地も、前輪駆動版より若干劣るようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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