ジャガーXK ダイナミックR vs F-タイプRクーペ

公開 : 2014.08.17 23:50  更新 : 2017.05.29 19:33

正式にはXK ダイナミックRと名付けられたこのクルマはXKFR-Sよりは安価な位置づけだ。有終の美を飾るに値するモデルかどうかを見ていくことにする。

トップ・グレードのXKR-Sは550psを発生。溢れんばかりのパワーは、時に圧倒されそうになるほどである。それに比べるとダイナミックRの出力は510psにデチューンされているため、額面上は大人しく感じるけれど、それでも500psを軽々と超える。63.8kg-mというトルクは充分に力強いし、RSファミリーと比べるとバランスの良さを感じた。

内装のエクイップメントの豊富さや、£69,975(1,200万円)というXKR-Sほど暴力的でない価格を考えると、まさにいいとこ取りなモデルなのだ。

イタリアン・レーシング・レッドのボディ色は無償オプション、20インチのバルカン・グロスブラック・ホイールを£515(7万6千円)で選べる点も嬉しい。

XKRと同じステアリングの織りなす、軽くなめらかなタッチや、シャシーのレスポンスはこのクルマでないと得られない点のひとつだ。

ただし完璧ではない。バンピーな路面では前後のコミュニケーションが気迫だと感じた。シャシー自体の設計年次が古いことが大きく影響しているのだろう。よりいっそうプッシュしていけば現代のライバルほどシャシーが堅固ではないとも感じる。サーキットを2、3分攻め立てればブレーキはフェードし始める傾向もある。

だけれども、時代遅れだと言うつもりはない。どこか特別なドライビング体験をもたらしてくれる不思議な魅力があるのだ。

現代のクルマのようにきりりと研ぎ澄まされている訳ではないし、路面形状が混沌としている場合にはサスペンションが ”あとはお任せします” と言わんばかりに仕事を放棄することもあるが、単なる旅路も至極特別なものになることは間違いない。

それに他誌ではあまり触れられていないけれど、1kmあたりのCO2排出量292gという値も、この手のクルマにしてはさほど悪いものではないと思う。どうだろうか。

およそ500kmを走らせた今回のテストでは燃費が7.0km/ℓをわずかに下回る程度だったのも決定的な汚点とは言いがたい。そりゃあ、BMW i8なんか給油はXKの5分の1程度で済ませられるし、地球環境に対しても10分の1くらいしか影響を及ぼさないことを考えれば、このクルマだって ’悪’ に仕立てられても仕方ない。あくまでこのクラスにおいて、である。

少し昔の話をしよう。初期の中でも初期の、XK8がオートカーのオフィスにテスト車両として納車されたのは1996年のことだった。それはもう、どの出版社も興味津々である。

華麗なコーナリングをキメるXK8のショットの画角を表紙に使うことになり、ああでもないこうでもないと写真部のメンバーと話し合ったことを覚えている。ジャガーはとんでもないクルマを作った、と言うのが当時の私の感想だ。手の届くアストン・マーティン、それだけではなく当時のアストンより運転が楽しいとさえ思った。

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