アストンマーティンDBX 詳細データテスト 速さと洗練性を兼備 標準車より楽しい タイヤは不足

公開 : 2022.12.10 20:25  更新 : 2023.01.05 00:38

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

DBX 707はやんちゃなホットロッド的な魅力の持ち主だ。それは動力性能面だけでなく、運動性においても同じことが言える。ポルシェカイエンターボGTにも似たようなところはあるが、標準モデルよりはるかに多くのことを伝えてくるクルマだ。それはもう、ほとんど度を越していると言えるほどに。

コーナリングでは、正しく駆動力を配分するが、ややラフで急激に変化する感じがある。それを把握できるようになれば、丁字路を素早く抜けたり、2速で曲がるようなコーナーでは、なめらかな挙動を見せてくれる。

707psもあるDBXは直線番長じゃないか、と思うかもしれないが、どんな速度域でもスライドさせて楽しむのはイージーだ。それでいて、上質なクルージングをこなすこともできる。
707psもあるDBXは直線番長じゃないか、と思うかもしれないが、どんな速度域でもスライドさせて楽しむのはイージーだ。それでいて、上質なクルージングをこなすこともできる。    LUC LACEY

速いSUVの大多数と比べても、どの速度域でもエンターテインメント性や一体感がかなり強い。ただし、常に先読みできるようなものではない。グリップの限界域で、これだけのサイズのクルマがスライドしたり、スポールセダンのような走りを見せるというのは、それだけでも斬新だ。

このクルマの運動性の特長は、これだけのサイズやボリュームでありながら、生き生きとしたハンドリングのバランスを備えていることにある。しかし、ドラマティックさに偏っているようなキャラクターではなく、それでいて妥協がみられるようなこともない。

モンスターっぽいものではない。日常づかいするようなモードでは、従順さと操縦性のブレンド具合が絶妙で、上下方向のボディコントロールはこれだけの重量をきっちり押さえ込んでいる。それでいて、室内に漂う高級感を台無しにするようなことはない。

ステアリングのペースや鋭さはほどほどで、大型のラグジュアリーカーに合わないナーバスさはこれっぽっちもない。どんな状況でもグリップレベルは一定していて、直感的に推し量れる。ステアリングを介したコミュニケーションは、普通に運転していたもインフォメーションが感じられるが、荒っぽかったり過剰だったりすることはない。

シャシーバランスはきまぐれで試すようなものではなく、遊べる余地はさほど大きくない。やってみると、アグレッシブな入力をした場合、ボディコントロールとハンドリングの安定性が落ちはじめる。車体のウェイトが、ダンパーやアクティブスタビライザーには文字通り荷が重く、それが荷重移動するたび明らかになるのだ。

同じく、前後への負荷が大きく変わるたびに、ステアリングはしっかりと重くなったり、ちょっと不安になるほど軽くなったりするところもある。もっとも、コミュニケーションがなくならない範囲内での話だが。

このクルマは、全力で組み合うことを求めてくるタイプの速い四駆だ。あまりにも巨体で幅が広いので、カントリーロードならどんなルートでもスポーツセダンのような夢中になれる走りができるわけではない。それでも、なだらかなコーナーと開けたストレートが適度に組み合わさった道であれば、火を吹くような走りで感服させてくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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