オフローダーの民主化 ジープ・チェロキー ランドローバー・レンジローバー 英米の革新者 後編

公開 : 2023.01.28 07:06

唯一無二のフィーリングへ浸れる

とはいえ、クラシック・レンジへ乗る度に、得もいわれぬ独特なドライビング体験に筆者は惹かれてしまう。エアコンは備わらないが、ヒーターは好調で冬場でもすぐに車内は暖かくなる。大きなサイドウインドウを少し開く。

巨大なガラスエリアに四方を覆われ、コンバーチブルに乗っているような感覚にも近い。グレートブリテン島を吹く風が車内に流れ込み、外界との距離がさらに縮まる。

ダークグリーンのランドローバー・レンジローバー 3.9SEと、ブラックのジープ・チェロキー 4.0リミテッド
ダークグリーンのランドローバーレンジローバー 3.9SEと、ブラックのジープチェロキー 4.0リミテッド

滑らかに回転するV8エンジンが、ドライバーの足もとで脈動する。サスペンションが路面をしなやかに受け流し、コマンドポジションの姿勢で自信を持って運転できる。レンジローバーは、古くても的を得たオフローダーだ。

操縦性には、あえて触れたくなるような特長がない。現実として、気にするドライバーも少ないだろう。だが、唯一無二のフィーリングへ浸ることができる。

それでも、オンロードでの印象は、チェロキーの方が遥かに優れていることは否定できない事実だ。オフロードでの走破性では逆転するとしても。

急いで家に帰りたい時、当時のオフローダーとしてチェロキーは最高のモデルに数えることができた。ケータハム・セブンを理想的なスポーツカーとしてガレージに収めていれば、残りはチェロキーで満たすことも可能だっただろう。

自動車の進化での重要な意味

特に英国人は、レンジローバーが世界を変えたオフローダーだと考えがち。だが実際は、XJ型のチェロキーの方が、自動車の進化の過程で重要な意味を持っていたと思う。より革新的なモデルといえた。

モノコック構造のユニボディを採用し、1990年代に訪れたSUVブームの幕を開いた。それは現代にまで続いている。乗用車と四輪駆動車を、見事に融合させていた。

ジープ・チェロキー 4.0リミテッド(1984〜2001年/英国仕様)
ジープ・チェロキー 4.0リミテッド(1984〜2001年/英国仕様)

生産数を見ると、高級志向へシフトしたクラシック・レンジが1台誕生する毎に、チェロキーは9台がラインオフしていた。影響力の差は明らかだろう。

近年、XJ型ジープ・チェロキーはクラシックカーとして再び注目を集め始めている。上級感と日常性、オンロード性能とオフロード性能を両立させた多能ぶりは、現代でも充分通用するといえる。もう少し早く英国へ上陸していれば、とも考えてしまう。

他方、英国人としては初代ランドローバー・レンジローバーへ強い共感を抱かずにはいられない。他を圧倒するオフロード性能を活かせる場所は限られ、過剰なほどかもしれないが、クルマとしての特別感や実用性を際立てていることも事実だ。

ドライビング体験は他に例がない。筆者にとっては、より長時間味わいたいオフローダーだといえる。

協力:マイケル・デビッド・カーズ社、キングスレー・カーズ社

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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