オフローダーの民主化 ジープ・チェロキー ランドローバー・レンジローバー 英米の革新者 後編

公開 : 2023.01.28 07:06

ワゴニアへ触発され誕生したレンジローバー。SUVの一層の民主化を進めたチェロキーとともに、英国編集部が振り返ります。

舗装路で発揮される高級オフローダーの能力

オンロードでの初代ランドローバーレンジローバーの強みは、コマンドポジションにある。高い視点でカーブの全体像を把握しやすく、自信を持って滑らかに操れる。

今回ご登場願ったクルマは1990年式で、数年後に装備されたアンチロールバーが付いていない。それでも、コーナリングは安定している。

ダークグリーンのランドローバー・レンジローバー 3.9SEと、ブラックのジープ・チェロキー 4.0リミテッド
ダークグリーンのランドローバー・レンジローバー 3.9SEと、ブラックのジープチェロキー 4.0リミテッド

穏やかなペースで流せば、高級オフローダーとしての能力を実感する。重厚感のなかに、2代目ジープ・チェロキーでは得られない快適性を発見できる。特に路面からの細かな入力の処理は秀でている。

XJ型チェロキーの乗り心地も不快なわけではない。ステアリングホイールの操舵感は軽く、よりクイック。手のひらへの感触も充分。高速道路では、比較すると直進安定性で及ばないようではあるが。

1992年にロングホイールベース版のLSEが登場したことで、クラシック・レンジの高級オフローダーとしてのステータスはさらに向上した。高級サルーンを置き換える勢いの、21世紀の今を見越した追加といえるだろう。

そもそも標準モデルの場合、リアシート側の空間は充分とはいえなかった。現代の基準でいえば、チェロキーも正直狭い。

インテリアの設えは当時の乗用車に近いが、デザインはやや時代遅れ感がなかったわけではない。チェロキーが英国へ上陸したのは1993年でも、モデル自体の発売は1984年。既に9年が経過していた。クラシック・レンジの発売は1970年にまで遡る。

ディフェンダーとのつながりを感じる車内

チェロキーの内装にはプラスティックが溢れ、パネル類は直角的で、1980年代のアメ車的。ダッシュボードにはフェイクウッドがあしらわれているが、上面はソフト加工され、ステアリングホイールには上級感が漂う。

シートは当時オプション設定されていたレザー。英国で高級モデルとして売ろうと考えていた表れといえる。北米では、よりベーシックなインテリアが主力だった。

ランドローバー・レンジローバー 3.9SE(1970〜1996年/英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー 3.9SE(1970〜1996年/英国仕様)

装備も充実している。リミテッド・グレードのチェロキーには、エアコンとクルーズコントロールが標準。クラシック・レンジの場合、これは最上級グレードのヴォーグSE以外では高価なオプション扱いだった。

チェロキーの登場が、レンジローバーの高級志向をさらに強めた。1993年の時点で約2倍の価格差があった。ランドローバーは、ジープと直接的に戦うことを考えなかった。

クラシック・レンジの装備が及ばなくても、不満を口にするマニアはいないだろう。それでも、ダッシュボードのデザインはまとまりが悪い。大きなフロントガラスと高いフロアの間に挟まり、厚みが薄く操作系を配置する余地が限られている。

ステアリングホイールの裏側にも、スイッチ類が並ぶ。ラベリングも不十分。ヒーター・パネルは横に長く、配置を覚えるまでは扱いにくい。基本設計が古く、初代ディフェンダーとのつながりの強さを感じさせる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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