2024年への有能なアンカー ボルボXC90 T8リチャージへ試乗 小変更で走りを向上

公開 : 2023.01.28 08:25

アップデートで高効率・活発になった走り

電動パワートレインの能力が高められたことで、走りにも変化が生まれている。電気のみで走行可能な距離が、65km前後へ伸ばされたことがトピックだろう。実際、試乗でもそれに近い距離を走れていた。従来から50%増しに近い。

駆動用バッテリーの充電量がなくなった時の燃費は、12.4km/L程度へ落ち込む。それでも、日常的な利用の範囲なら、こまめに充電を繰り返せば大幅にガソリン代を節約できるだろう。

ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)
ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)

125psへパワフルになった駆動用モーターのおかげで、動力性能も高められている。車重は2314kgもあるが、明らかに加速力が向上。速度域に関わらず、内燃エンジンの出番は少なくなっている。好燃費にも結びつく。

一方でドライブモードをパワー・モードへ切り替えると、システム総合で455psという実力を体感できる。7シーターのSUVとして、必要以上の速さを披露する。

駆動用モーターと内燃エンジンとの協働ぶりは、大きめの負荷がかかった時に若干ギクシャクする場面も感取された。フロントタイヤをエンジン、リアタイヤをモーター、それぞれ個別に担当しているためだろう。

乗り心地や操縦性は、サイズを考えれば充分評価できる。ドライバーが運転を楽しめる特性とはいえないが、そんな体験を求めてXC90を選ぶ人はいないと思う。

2024年に向けた素晴らしいアンカー

新たにトリムグレードも見直されているが、アダプティブダンパー付きのエアサスペンションを英国で選べるのは、トップグレードのアルティメットのみとなった。それ以外のグレードでは、オプションでも選べない。

試乗車だったプラスダーク仕様のXC90には、一般的なダンパーにオプションの21インチ・ホイールが組まれていたが、このクラスらしい落ち着いた乗り心地を希望するユーザーは別の設定を検討したい。少なくとも、ホイールはインチダウンした方がいい。

ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)
ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)

高級・大型SUVへ期待するほどの、路面との隔離性は得られていなかった。古いアスファルトの上ではノイズが目立ち、凹凸に対する揺れも大きめ。姿勢制御は悪くないものの、流れの速い郊外の道では軽くない車重も実感することになる。

もっとも、XC90のユーザーが求めるであろう、日常的な速度域での動的能力に不足はない。もう少しリラックスできる質感なら、一層望ましいという程度だ。予算に余裕がある場合は、アルティメット・グレードを候補にしたい。

ボルボXC90ほど実用性に長け、知的なスタイリングと快適なインテリアを備える、充足感の高い7シーターSUVは他に思い浮かばない。2024年にEX90へバトンタッチするまで、アップデート版は確実なアンカーを務めることができそうだ。

ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)のスペック

英国価格:7万6530ポンド(約1224万円)
全長:4953mm
全幅:1923mm
全高:1776mm
最高速度:180km/h(リミッター)
0-100km/h加速:5.4秒
燃費:76.9km/L
CO2排出量:30g/km
車両重量:2314kg
パワートレイン:直列4気筒1969ccターボチャージャー+永久磁石同期モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:14.9kWh(実容量)
最高出力:455ps/6000rpm(システム総合)
最大トルク:−
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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