バッテリーは最大624kWh スカニアが開発中の電動トレーラー ノルウェーで試乗 前編

公開 : 2023.02.27 08:25

自動車の電動化の波は大型トラックにも。英国編集部が、開発が進められるBEVのトレーラーへ試乗しました。

脱炭素に向き合うスウェーデンのスカニア

一部の量産車メーカーにとって、バッテリーEV(BEV)への市場の大転換は事業の終焉を意味するかもしれない。自動車の普及後、前例がないほどの変革期といえるが、スウェーデンのスカニアは自らが進むべき道を積極的に切り拓いている。

日本では少々馴染みの薄いスカニアだが、欧州ではメジャーな大型トラックメーカー。7.0Lや16.0Lといった、巨大なターボディーゼル・エンジンを搭載したモデルを現在は主に提供している。

スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド
スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド

トラックドライバーから羨望を集める、上級モデルが積むV8エンジンの最高出力は800馬力近くある。最大トルクは414.0kg-mに迫るという豪腕だ。それだけ、軽油も沢山燃やすが。

ただし、植物由来の燃料を用いることも可能。液化天然ガス仕様や、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のトラックも提供しており、低炭素輸送に向けた取り組みを怠ってはいない。水素燃料電池も模索しているという。

様々な手法で、スカニアは脱炭素へ向き合っている。エネルギー業界やトラック輸送業界も変革に迫られており、その未来を明確に予測することは難しい。ビジネス環境にも変化が求められている。多面的なソリューションが必要だと、同社は考えている。

さらに、顧客主導という方針を貫いている。一般的な上級サルーンのユーザーに、次の選択肢はBEVだと考えさせることとは次元が違う。経済を根底で支える、輸送業の経営に直結する。それが機能しなければ、社会自体が回らなくなってしまう。

600馬力以上とV8エンジン並みのトルク

スカニアは、都市部を中心に走る小型トラックで、BEV仕様の提供を2020年から始めている。事前に適合するであろう輸送会社の選定が行われており、今のところ順調に業務をこなしているそうだ。

それから3年、バッテリー・エレクトリック・トラック(BET)は次の段階へ進んだ。「スウェーデンのノースボルト社が製造するリチウムイオン・バッテリーを利用し始めています。容量は最大で624kWhまで拡大可能です」

スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド
スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド

「従来の小型BETが積む、駆動用バッテリーの2倍以上の容量です。それでいて、ユニットの重さや製造コストは変わりません」。開発プロジェクトを率いる、トニー・サンドバーグ氏が説明する。

「600馬力以上の最高出力と、V8エンジン並みの最大トルクを発生する、トリプルモーター・パワートレインを開発しています。中距離程度の走行を前提とした、トラクターヘッド(トレーラーヘッド)の提供が可能になりました」

「テストドライバーは、最大64tの荷物の牽引が可能だと話しています。従来のスカニアのトラックと同様に」

ちなみに、この64tという重さは英国で許容される重量より5割以上も多いが、欧州では許可されている数字だ。驚かされるパワーだと思う。

BETの課題は何より航続距離だが、開発中のスカニアは一般的な40tトレーラーを牽引する場合、80%の充電量で321kmを走行可能だという。急速充電速度は、375kWまで対応するらしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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