290万円以下のクラシック・スポーツ ホンダS2000 ヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) 2000年代の2台

公開 : 2023.03.05 07:06

サーキットではロータスと異なる印象

今回ご登場願ったイエローのヴォグゾールVX220は、英国仕様のオペル・スピードスター。オーナーのイアン・ホール氏が2004年に購入したといい、走行距離は約4万5000kmという短さ。これ以上に状態の良い例は、恐らくないだろう。

「当初は多くの問題を抱えていて、ヴォグゾールの工場でリビルドされています。1度2012年に売却したのですが、2018年に買い戻したんです。忘れられなくて」

ヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) ターボ(2003〜2005年/英国仕様)
ヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) ターボ(2003〜2005年/英国仕様)

「他に例がないクルマです。別れてみて、素晴らしさを知ったんです。1つ1つの部品ですら大好きです」。ホールが笑顔で話す。

彼の意見へ同意するのに、長い時間は必要ない。ルーフを畳んでしまえば、スピードスターへの乗り降りは簡単。適度にタイトで、居心地の良いコクピットへ身体を収められる。

一般的な基準では豪華といえない内装だが、初期のエリーゼと比べれば悪くない。このクルマはツーリング・パッケージや4スピーカー・ステレオ、レザー内装、ドリルド・ブレーキディスクなどを備えるフルオプション状態。かつて広報用車両だったという。

実用性には疑問符が付くとはいえ、週末の非日常を楽しむためのミドシップ2シーターだ。日常的に運転することは意図されていない。

パッドの隙間から姿を見せるアルミの素地が、ロータス由来の押出成形材によるシャシーだと静かに主張する。ところが、サーキットでは異なる印象なことに驚かされた。

楽しく懐が深く、喜びに満ちている

スターターボタンを押して始動する4気筒エンジンのサウンドは、ファミリー・ハッチバックが聞かせるものと大きく違わない。だがアクセルペダルを踏み倒すと、ターボチャージャーの高音域が重なり出す。かなりワイルドだ。

レッドラインは6500rpmと低いが、車重930kgに226psの最高出力だから至って活発。甘美に回るロータスとは異なり、ブースト圧が高まると、28.9kg-mの最大トルクが湧いてくる。太いトルクでラップタイムは削りやすい。

ヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) ターボ(2003〜2005年/英国仕様)
ヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) ターボ(2003〜2005年/英国仕様)

シフトレバーは少々握りにくいものの、レバーのメカニカルな動きはエリーゼより好印象。テンポ良くギアを選べば0-97km/h加速を4.2秒でこなし、現在でも驚くほどの俊足といえる。最高速度も249km/hに達する。

速いだけではない。フロントが175/55、リア225/35という細身の17インチ・タイヤを履き、サーキットで身軽に踊れる。小径なステアリングホイールへ、ふんだんな情報量が伝わってくる。シャシーとの会話を楽しめるように。

湿った路面では、フロントが簡単に外へ流れる。振り子のようにリアが振られないよう、展開するトルクは注意深く探る必要がある。ドライコンディションでの振る舞いはまったく別なことを、過去に体験している。

スピードスターからS2000へ乗り換えると、当初はマイルドに感じられる。だが、理解度が高まるにつれて楽しく懐が深く、喜びに満ちていることが見えてくる。

初期型では、限界領域で手の平を返すような挙動変化に批判が出た。しかし幾度かの改良を経て、走り込まれた今回の例では安心感が伴う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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