290万円以下のクラシック・スポーツ ホンダS2000 ヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) 2000年代の2台

公開 : 2023.03.05 07:06

新しいホットハッチと同等以下の値段で、魅力的な旧車が狙えるとする英国編集部。年代毎に6回シリーズでご紹介します。

エリーゼ用アルミ・シャシーを再設計

20世紀が終わりを迎える頃、沢山の希望と少しの不安が入り乱れていた。時代の変わり目が、ドイツと日本の主力メーカーへ変革のきっかけを与えたのかもしれない。

ホンダの場合は、1998年の創立50周年に合わせてS2000が発表されるまでに、一通りのタイプRが出揃っていた。それでも、シビックとは対象的なスポーツカーは、センセーショナルなものだった。

ホワイトのホンダS2000とイエローのヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) ターボ
ホワイトのホンダS2000とイエローのヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター) ターボ

時期を同じくして、1999年にスイス・ジュネーブ・モーターショーで発表されたのが、オペル・スピードスター・コンセプトだ。英国オペルのヴォグゾール・ディーラーへ量産版が2001年に並んだ時は、驚きを伴って歓迎された。

スピードスターのドラマチックなFRP製ボディの内側には、オペルの心臓が宿っていた。当初はアストラ用の自然吸気2.2Lオールアルミ・ユニットが、2003年からはオールスチールの2.0Lターボが載った。

既存の4気筒エンジンが僅か68kgのアルミニウム製スペースフレームと組み合わさることで、フェラーリに迫る動力性能を発揮した。2万5000ポンドという、現実的な価格で購入が可能だった。

フォルムは英国人にとって見覚えのあるものだったが、実際、ミドシップ・シャシーは縁の深いものだった。当時は同じGM傘下にあったロータスの、エリーゼ用シャシーを再設計したもので、グレートブリテン島の南東、ヘセルの工場で製造された。

1.0L当たり120psという高出力型

一方のS2000も、長いフロントノーズに納まったのは2.0Lの4気筒エンジン。重めのスチール製モノコック構造で後輪駆動というパッケージングは従来的ながら、サスペンションは前後ともにダブルウイッシュボーン式を採用していた。

そして4気筒エンジンは、オールアルミで軽量だった。ホンダ自慢の可変バルブタイミング機構、VTECを組み合わせた、ダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)のヘッドを載せていた。1.0L当たり120psという高出力型で、驚きの9000rpmまで許容した。

ホンダS2000(1999〜2009年/英国仕様)
ホンダS2000(1999〜2009年/英国仕様)

Z4を擁するBMWボクスターをヒットさせたポルシェに並ぶブランド力を、ホンダは持っていなかった。マツダのMX-5(ロードスター)より高価でもあった。しかし、周囲とは違うモデルを欲したドライバーの心を捉えた。

熱烈なファン層が形成され、改良を続けながらS2000は10年間も生産が続いた。合計で約11万4000台という生産数は、大ヒットとはいえないけれど。

他方、オペル・ロードスターは初期の自然吸気で約5000台。改良後のターボは2000台にも届いていない。2001年から2005年までの4年間で姿を消している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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