意外に信頼できるV8エンジン TVRキミーラ 英国版中古車ガイド シャシーの錆にご注意

公開 : 2022.09.01 08:25

ローバー社製のV8エンジンを搭載し、信頼性に優れるキミーラ。より上品な設定だった2シーターを、英国編集部がご紹介します。

歴代のTVRでも際立つ高い信頼性

手作業で組み立てられたTVRのスポーツカーというより、上品なジャガーのように感じられるキミーラ。ゴルフバッグを2つ余裕で積める荷室と、贅沢なレザー内装に騙されてはいけない。走りは侮れない。

同時期に提供されていたグリフィスは、TVRの評価を高めることに繋がった。プレイステーションのゲーム、グランツーリスモに収録された影響も小さくないはず。だが、それ以上に商業的な成功を収めたのはキミーラだった。

TVRキミーラ(1991〜2003年/英国仕様)
TVRキミーラ(1991〜2003年/英国仕様)

販売台数はグリフィスの2倍以上。それまでTVRが視野に入っていなかったドライバーにも、訴求できたモデルだった。

TVRは信頼性が低いという考えも、キミーラには当てはめないで欲しい。ホンダフィットのように故障知らずではないが、定期的な点検を怠らなければ安心して長距離ドライブに出かけられる。

現在の英国には約5000台のTVRが走っており、約2000台はキミーラが占めている。生存率の高さが信頼性を裏付けている。

当時のTVRを率いていたピーター・ウィーラー氏の話では、大型犬のジャーマン・ポインターもキミーラのデザインに関わったらしい。「彼はいつも好き勝手走り回っていました。そして、テーブルの上の樹脂製モデルに噛み付いたんです」

その噛み跡がインテリアデザインへ展開したとか、しないとか。

AUTOCARでは、1999年にポルシェボクスターとホンダS2000の3台で比較テストを実施し、操縦性と乗り心地の優秀さを讃えている。新車当時から、素晴らしいスポーツカーとして評価されていたのだ。

ローバー社製のV8エンジンに5速MT

キミーラへ搭載されたのは、ローバー社製のV8エンジン。TVRが設計したユニットより遥かに信頼性が高く、チューニングできる幅も広かった。

1番お手頃だったのが4.0L仕様で、1991年から2003年までの全生産期間で選択可能だった。初期型には284psを発揮する4.3L仕様も用意されていたが、1994年に278psの4.0L高圧縮比仕様へ変更されている。

TVRキミーラ(1991〜2003年/英国仕様)
TVRキミーラ(1991〜2003年/英国仕様)

トランスミッションは、当初はローバーT5と呼ばれる5速マニュアルだったが、1994年からボルグワーナー社製へスイッチ。人気としては前者の方が高いが、信頼性では後者の方が勝る。

ちなみに、ローバーのMTでは1速の隣にリバースがある。他方、ボルグワーナーの方は5速の隣に位置するから、外からでも見分けが付きやすい。

同じ1994年には、パワフルなキミーラ 500が登場した。グリフィス 500と同じ、344psを発揮する5.0L V8エンジンが搭載されていた。有り余る馬力で極めて速く、今でも英国では高い人気を保っている。

1996年にMk2として大きなアップデートが施され、4.0Lの高圧縮比エンジンは289psの4.5L V8へ交代。サスペンションやブレーキに改良が加えられている。

見た目では、フロントグリルやテールライトのデザインが一新。ミラー部分にドアロックが内蔵されるなど、ディティールも異なる。

2001年にはMk3へ進化。2+2モデルのサーブラウと同じヘッドライトとフロントシートを獲得した。生産台数は少なく、キミーラのなかでは特に希少性が高い。

記事に関わった人々

  • AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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