主張しすぎない最高 BMW M5(E34型) 英国版クラシック・ガイド M1譲りの直6 前編

公開 : 2023.04.22 07:05

BMWの高性能サルーン、M5の2代目に当たるE34型。クラシックとなったMモデルの魅力を、英国編集部がご紹介します。

主張しすぎない高性能サルーン

主張しすぎないことを、高性能サルーンの特長に掲げたBMW。一部のターゲット層には強く響いたに違いない。もっと特徴的な見た目を好んだドライバーも、いたとは思うが。

1990年に試乗したAUTOCARは、次のようにまとめた。「最高速度や中間加速は過去のベスト。操縦性や乗り心地との兼ね合いも最高。素晴らしい動力性能と燃費を両立しています。大人4名と必要な荷物を運べる能力を備えながら」

BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)
BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)

「路面への追従性、制動力、姿勢制御は量産サルーンとして異例の高さ。数段階、レベルが違います」。と更に続けている。初代BMW M5に当たるE28型より、E34型が優れているであろうことは予想できていたのだが。

ただし、刺激が薄れたと感じた人もゼロではなかった。ミドシップ・スーパーカーのBMW M1用ユニットから派生した3.5L直列6気筒エンジンをチューニングし、320psが引き出されていたが、エグゾーストには触媒が取り付けられていたためだ。

E34型M5は、1992年に3.8Lへ排気量が拡大。大幅なチューニングが加えられ、最高出力は345psへ向上している。この後期型を、AUTOCARでは「世界で最も速く能力の高いサルーン」だと絶賛している。

当時、英国では1365ポンドだったニュルブルクリンク・パッケージを選択すると、リアタイヤは17インチの255/40というサイズへアップグレード。ホイールも9.0Jのワイドなものが組まれた。

周囲を驚かせる羊の皮を被った狼

このE34型M5で大きな特徴といえたのが、1992年に追加されたM5ツーリングだろう。Mモデル初のステーションワゴンで、生産数は891台と極めてレア。コレクターズアイテムとして、今後の価値上昇は間違いない。

また、幾つかの特別仕様車も欧州では提供されている。こちらも同様に、近年の取引価格は高騰気味にある。

BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)
BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)

南アフリカ仕様のE34型M5は、現地の工場でキットから仕上げられたが、それ以外はすべてドイツのBMWモータースポーツ社、現在のBMW M社工場で生産されている。同じ右ハンドル車として、南アフリカ仕様も一部が英国へ輸入されているから注意したい。

S38型エンジンは、メンテナンスを怠らなければ耐久性は高い。そのかわり、リビルド費用は安くない。英国の場合、1万5000ポンド(約241万円)前後は必要になる。

E34型M5で心配したいのが、ボディのサビ。特に1993年以降は水性塗料が用いられるようになり、酸化しやすい。ボディシェルが大きく錆びると剛性が低下し、走行にも影響が出てしまう。

スポーツサルーンだから、過去の事故歴にも注意したい。購入時は、過去の履歴も含めてしっかり確かめたいところ。ボディのレストアにも1万5000ポンド(約241万円)以上は必要と考えたい。異常に安いM5は、疑った方が良いだろう。

控えめな見た目で非常に俊足なM5は、「羊の皮を被った狼」として周囲を驚かせた。今回ご登場願った、M5のエンブレムやスポイラーを省略した3.8Lエンジンの後期型は、その最たる例といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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