主張しすぎない最高 BMW M5(E34型) 英国版クラシック・ガイド M1譲りの直6 後編

公開 : 2023.04.22 07:06

BMWの高性能サルーン、M5の2代目に当たるE34型。クラシックとなったMモデルの魅力を、英国編集部がご紹介します。

満ち足りたドライビング体験に浸れる

BMW M5のドライバーほど、満ち足りたドライビング体験に浸れる人はいないかもしれない。本域まで気張れば望外な楽しさが待っていて、穏やかな気持ちなら1日中でも高速道路を家族と一緒に走り続けられる、夢見心地の快適性も味わえる。

特別仕様に限らず、E34型M5はどれもがタイトでソリッドな走りを披露する。前期型でもパワフルに感じられるのが正解。そんな印象でなければ、どこかに問題を抱えていると考えていい。

BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)
BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)

S38型の直列6気筒エンジンは、オーバーヒートした過去がないか確かめたい。ウオーターポンプやサーモスタット、カップリングファンなどの不調が原因となる。ヘッドガスケットの抜けにも注意したい。

内部摩耗の状態も確認すべき部分。エンジンオイルの消費が多くないか、ラジエタークーラントが漏れていないか、排気ガスに過度な白煙が混ざっていないか、その兆候を調べる。

スチール製のエグゾースト系は錆びる。パワーが足りない場合は、プレナムチャンバー内のバキューム・フラップの不具合かもしれない。

後期の3.8Lエンジンは、前期が採用していたディストリビュータから、気筒毎のダイレクトコイルへ変更されている。吸気バルブが拡大され、デュアルマス・フライホイールを獲得し、圧縮比が10:1から10.5:1になり、最高出力を高めている。

トランスミッションの耐久性は高くない

英国に残存する殆どのE34型M5の場合、トランスミッションはリビルドか交換されているようだ。過去の整備記録を振り返るのと同時に、試乗時はクラッチペダルを踏んでニュートラル状態にし、レイシャフトの振動を確かめる。

変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュは、1速と2速が特に弱い。異音や走行中のギア抜けがないかも確認したい。

BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)
BMW M5(E34型/1988〜1995年/欧州仕様)

前期型では5速マニュアルだが、1994年以降は6速マニュアルにアップデートされている。6速の方が価値は高いが、ギア比が長い。アウトバーンを高速で巡航走行するような使い方へ適している。

リアのリミテッドスリップ・デフも、定期的なメンテナンスが必要。異音や振動がないか確かめたい。タイヤの偏摩耗は、サスペンション・ブッシュの劣化が原因なことが多い。ステアリングラックはM5の専用品だ。

走行中に凹凸を越えてタイヤがバタバタと暴れる場合は、ショックアブソーバーの劣化を疑う。後期型に採用されたエレクトリック・ダンパー・コントロール(EDC)は、ポーラインドのナゲンガスト(Nagengast)社がリビルドしてくれる。

1994年には、Mパラレルと呼ばれるスタイリッシュなアルミホイールが追加されている。人気のアイテムだ。

上級サルーンでありながら、欧州仕様の場合、エアコンやパワーシート、レザーシートなどはオプション。クロームメッキ・トリムをブラックに変更することも可能だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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