ズバリ、マルチに使えるバン フォルクスワーゲン T7マルチバン ベスト・ラージモデル:AUTOCARアワード2023

公開 : 2023.05.15 08:26

前年を振り返り、各カテゴリーでのベストを称えるAUTOCARアワード。見事、2023年に受賞した栄えある10台をご紹介します。

名が体を表すマルチに使えるバン

フォルクスワーゲンのT7マルチバンは、名が体を表している。その名の通り、マルチに使えるバンだ。バンのなかのバンといえる。

2023のベスト・ラージモデルに選出されたのは、T7世代へモデルチェンジした最新版。7シーターのミニバンとして使えるが、フォルクスワーゲンでは商用車にカテゴライズされている。非常に多目的なクルマだ。

フォルクスワーゲン T7マルチバン(英国仕様)
フォルクスワーゲン T7マルチバン(英国仕様)

英国市場では、フォード・トランジット用のプラットフォームを利用した新モデルが間もなく登場予定。バッテリーEVには、ID.バズも存在する。T7世代のマルチバンも合わせると、フォルクスワーゲンは3種類のワンボックスを擁している。

これらはいずれも、戦後に人気を博したフォルクスワーゲン・タイプ2(T2)からコンセプトを継承している。とはいえ、マルチバンはT7という型式を名乗るだけあって、正当な後継者に相当する。

多くの人や荷物を運べる市民のクルマとして、ボクシーなフォルムをまとい、74年間も世代交代しながら作り続けられてきた。その最新版がT7マルチバンだ。単に余裕のある車内空間を備えるだけでなく、与えられた能力も非常に高い。

驚かされる洗練性と快適性

前も後ろも平面的な面構成のボディなことを考えると、見た目に個性を与えることは簡単ではない。それでもT7ではモダンさを高めつつ、視覚的な魅力も増している。フロントマスクは特徴的だし、全体の質感も高い。

ボディサイドにはクロームのストライプが入り、上下に別れたツートーンカラーを選べば一層可愛らしい。オーナー好みでカスタムできそうな雰囲気も、プンプンと漂う。

フォルクスワーゲン T7マルチバン(英国仕様)
フォルクスワーゲン T7マルチバン(英国仕様)

乗用車用のプラットフォームをベースにしたことも、T7の訴求力を高めている。サイドドアはスライド式で、テールゲートは巨大。直立気味のフロントシートに座ってみても、確かに商用車的ではある。前後に動くリアシートは、実用性を配慮したものだ。

ところが実際に走り出してみると、洗練性と快適性に驚かされるはず。走行時の静寂性や、傷んだ路面の処理能力は、ゴルフやアルテオンに及ばないものの、これほどの大容量を備えたモデルとしては秀逸だろう。

インテリアの知覚品質も優秀。価格は確かに少々お高めながら、その予算に期待する通りの内装で仕立てられている。商用車とは一線を画す。

標準装備は充実し、用いられている素材はハイグレード。ちょっとした高級車の雰囲気すら漂わせる。ライバルは上級なステーションワゴンやSUVといえ、納得できる仕立てでもある。

実用性の高さは他の追随を許さない。それでいて、ポップな雰囲気で家族と一緒に乗るのが楽しい。2023年のベスト・ラージモデルは、フォルクスワーゲン T7マルチバン以外にないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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