サーキットでの精度と熱意 アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオへ試乗 100周年記念仕様

公開 : 2023.07.14 08:25  更新 : 2023.08.18 08:52

想像ほどシリアスさを強めたわけではない

フランスの公道を走り出すと、「ミニGTA」という言葉からイメージするほど、シリアスで緊張感が漂うわけではないことに感心する。穏やかなドライブモードにある限り、ダンパーはしなやかに衝撃を吸収し、乗り心地は落ち着いている。

ステアリングホイールは軽くダイレクト。V6エンジンと8速オートマティックは、日常的な交通へ見事に対応し、滑らかに市街地を走れる。稀に、低速域でギクシャクする場面があるけれど。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)
アルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)

510psから11psほど増強された馬力は、普段使いでは実感できない。2500rpmで発揮される、61.1kg-mという最大トルクへ変更はない。高回転域まで意欲的に吹け上がる素振りが、僅かに強められた程度。

中回転域でのトルクが太く、レッドラインまで鋭く回る、素晴らしい特長はそのまま。エグゾーストノートをもう少し上品にし、エンジンの燃焼音が聞こえるようになれば、一層好ましい体験になるだろう。

引き締められた足まわりによって、カーブでのボディロールは確かに小さくなっている。だが、日常的な速度域では大きく印象を改めたわけではないようだ。

ひとしきり一般道で堪能して、パリの南へ位置するサーキット、オートドロム・ドゥ・リナモンレリへ場所を移す。路面は平滑とはいえず、カント角も強く、新たなシャシーチューニングを味わうにはぴったりな場所といえる。

サーキットでの精度や熱意を獲得

コースインすると、すぐにシャシーが能力を向上させたことへ気付く。高い速度域で路面の隆起部分などを通過しても、従来以上に路面を捉えて放さない。高速コーナーでのステアリングの正確性は高まり、情報量も増えているようだ。

タイトなヘアピンからの立ち上がりでは、明確に安定性を増している。トラクションが増大したおかげだろう。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)

従来のジュリア・クアドリフォリオでコーナーへ突っ込むと、電子制御リミテッドスリップ・デフが外側のリアタイヤへトルクを割り振り、豪快に脱出してみせた。しかし過多なテールスライドへ陥り、進行方向へのトラクションが失われる場面もあった。

一方、機械式LSDになったアップデート後では、全体的にマイルドさを強めている。それでいて意欲的にラインを狙え、一層パワーをかけやすくなった印象。安定性が高まったことで、より不安感なく振り回せる。

ストレートめがけた脱出加速も、ひときわ鋭くなっている。ドライバーが望めば、派手なドリフトへ持ち込むことも許容する。

登場から8年目を迎えるジュリア・クアドリフォリオだが、その魅力は当初と変わらない。現在、新車で購入可能な高性能サルーンのなかで、最も自然で落ち着きがあり、直感的に操れるモデルだといっていい。

さらに今回の改良を経て、従来にはなかったサーキットでの精度や熱意を獲得したようだ。なおジュリアは、数年以内にバッテリーEVへ置き換えられる予定にある。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)のスペック

英国価格:7万8195ポンド(約1368万円)
全長:4643mm
全幅:1860mm
全高:1436mm
最高速度:307km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:228g/km
乾燥重量:1660kg
パワートレイン:V型6気筒2891ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:521ps/6500rpm
最大トルク:61.1kg-m/2500rpm
ギアボックス:8速オートマティック/後輪駆動

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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