競争力はライバルと同等以上 アルファ・ロメオ・トナーレ PHEVへ試乗 足を引っ張る車重

公開 : 2023.05.07 08:25

ブランドの鍵を握る小型SUV、トナーレに最高出力280psを誇るPHEVが登場。英編集部が一般道でその実力を確かめました。

HVシステムはコンパスのアップグレード版

アルファ・ロメオは「ゼロ・トゥ・ゼロ」というスローガンを掲げ、新モデル開発へ取り組んでいる。2022年にはゼロ・エミッションのバッテリーEVを提供していなかった同社が、2027年までに内燃エンジンを積んだクルマをゼロにする、という目標だ。

その最初の1歩となるのが、今回試乗したアルファ・ロメオ・トナーレのプラグイン・ハイブリッドといえる。搭載するシステムは、基本的にはジープ・コンパス 4xeのアップグレード版だと考えていいだろう。

アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)
アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)

内燃エンジンは179psを発揮する1.3L 4気筒ガソリンターボで、6速ATを介して前輪を駆動。後輪は駆動用モーターが担い、トナーレの場合は122psと、コンパス 4xeから若干増強されている。

駆動用バッテリーもひと回り大きく、実容量で12kWhがうたわれる。航続距離は最長69kmとなり、多くの人が通勤の往復をまかなえるはず。CO2の排出量が小さく、英国では税制的に優遇される点も魅力といえる。

トナーレ固有の機能として触れるべきは、走行中に駆動用バッテリーの充電も可能なこと。長い下り坂などで惰性走行に入ると、自動的に50km/hが保持され、残った運動エネルギーは電気エネルギーとして回生される。

また市街地のゼロ・エミッション・ゾーンに備えて、駆動用バッテリーの充電量を温存することもできる。どちらもうまく機能していた。

車重は1835kg 軽快とは感じにくい身のこなし

アルファ・ロメオは、トナーレ PHEVをこのクラスで最もスポーティなSUVだと主張する。確かにフロントタイヤの反応は鋭く、ステアリングレシオはクイックで、ダイレクトな回頭性を叶えている。手のひらへの情報量は希薄ではあるが。

確かに、第一印象はスポーティかもしれない。だが、そんな心象は運転していると薄れていく。身のこなしが軽快とは感じにくい。DNAドライブモードをDのダイナミックへ切り替えても、連続するカーブを流暢にこなすことが得意とはいえないだろう。

アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)
アルファ・ロメオ・トナー・プラグイン・ハイブリッド Q4ヴェローチェ(英国仕様)

この大きな要因になっているのが、軽くない車重。駆動用バッテリーなどの影響で、トナーレ PHEVは1835kgある。特にリア側の増加割合が多いため、リア・サスペンションは専用チューニングを受けている。

ヴェローチェ・グレードの場合、アダプティブダンパーも装備され、足まわりは適度に引き締められる。とはいえ、路面の起伏などを通過すると、ボディをフラットに保つことへ苦労している様子だった。

穏やかな気持で、郊外の道を流している時が最も好印象。Nのナチュラル・モードを選ぶと、少し硬めの乗り心地ではあるものの、減衰力とのバランスが良くなり滑らかな走りに浸れる。

特に高速道路の速度域ではしなやか。シートの座り心地も素晴らしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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