ロータス・セブンの究極進化形 ドンカーブートF22へ試乗 リアルでソウルフル 前編

公開 : 2023.08.11 08:25

同社が誇る最先端技術 エックスコア

数名のスタッフが、ポリッシャーで部品を研磨している。パイプフレームを溶接する部門では、青白い火花が絶え間なく飛び散っている。

半分組み上がったF22のシャシーには、真っ赤なヘッドが載った直列5気筒エンジンが収まっている。その横に、これから取り付けられるAPレーシング社製のブレーキキャリパーが整然と並ぶ。

ドンカーブート社のワークショップの様子 
ドンカーブート社のワークショップの様子 

ディフューザー類は、サスペンション・コイルと同様に美しく塗装済み。ワークショップでは同時に数台のF22が作られていたが、どれ1つとして同じカラー・コーディネートにない。チャコールグレーのカーボンファイバー製部品を除いて。

ある1台は伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナ氏のヘルメット・カラーをモチーフにしているのがわかる。別のクルマは、ガルフレーシングのブルーとオレンジ。文面ではちょっと派手に感じられるかもしれないが、いずれも魅力的に見える。

カーボン製シェルは、同社が誇る最先端技術でできている。エックスコアと呼ばれる、複合素材を用いた超高剛性構造の成形技法を生み出すまでに、10年を投じたという。

発泡フォームを充填させたカーボン素材を型にはめ、加熱させることで膨張し形状が整う。発泡フォームが固まると、強固なカーボン製の構造体が完成する。信じられないほど軽量でもあるとか。

最高出力507ps、最大トルク65.1kg-m

エックスコアのワークショップは、外からは見えない場所にある。F22の生産だけでなく、古いドンカーブートのレストアにも活用されている。彼らは、FIA世界耐久選手権(WEC)で活躍する、トヨタGR010用のエアロパーツも製造している。

とあるF1マシンの部品も請け負っているとか。様々な工業製品に活用できる、同社の水準の高さを示す技術といえ、収益基盤にもなっている。過去には経営的に厳しい時代もあったと、父から事業を引き継いだデニス・ドンカーブート氏は振り返る。

ドンカーブートF22(欧州仕様)
ドンカーブートF22(欧州仕様)

少しそれたが、話題をクルマへ戻そう。このF22は、エックスコアの開発費も影響して、決して安くない。英国価格は、25万2000ポンド(約4536万円)になる。それでも、生産予定の100台はすべて商談が進められているそうだ。

後継モデルの予定はない。1990年代後半から親密な協力関係にあったアウディから2.5L直列5気筒エンジンを購入し、F22のために100基が確保されている。だが、この傑作ユニットは廃盤となったため、ドンカーブートも入手できなくなった。

そのかわり、徹底的なチューニングが施されている。アウディRS3 パフォーマンス比で100psと14.2kg-m増しとなる、最高出力507ps、最大トルク65.1kg-mまで強化されている。

トランスミッションは5速マニュアルで、ジャガーランドローバー由来のリミテッドスリップ・デフを装備。勇ましいサイドエグゾーストを、メッシュ越しに眺められる。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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