自動運転への道のりは遠く 先進的な追い越しアシスト機能も登場、しかし開発は困難の連続

公開 : 2023.08.09 06:05

クルーズコントロールや車線維持支援の導入など、世界的にクルマの自動化が進んでいます。しかし完全な自動運転に向けた道のりはまだ遠く、技術の開発も易しいものではありません。

自動運転実現への複雑な道のり

少しずつ普及が進む先進運転支援システム(ADAS)だが、車線維持支援(LKA)のような機能はなくてもいいと考える人も少なくないだろう。それでも、自動車メーカーは自動化に向けた道を歩み続けている。

欧州では、メルセデス・ベンツの新型Eクラスで自動追い越し機能を利用できるようになった。北米ではすでにCクラス、Eクラス、Sクラス、EQシリーズに搭載されているが、メルセデスによれば、欧州の交通事情に合わせて同機能を適応させているという。

メルセデス・ベンツは米国と欧州で自動追い越し機能「ALC」を導入した。
メルセデス・ベンツは米国と欧州で自動追い越し機能「ALC」を導入した。    メルセデス・ベンツ

メルセデスの「オートマチック・レーン・チェンジ(ALC)」システムは、「アクティブ・ステアリング・アシスト付きアクティブ・ディスタンス・アシスト・ディストロニック」の一部として導入されている。

80km/hから140km/hの速度で走行中、前方に遅い車両を検出した場合、車両境界線と「構造的に分離された方向車線」(つまり二車線道路)を検出すれば、自動的に車線変更を開始することができる。車両境界線が明確で十分なクリアランスがあれば、完全なオーバーテイクが可能である。

このALCを使用するには、MBUXナビゲーションが装着されていなければならず、また道路にも制限速度が設定されていなければならない。ドライバーの操作は特に必要ではないが、手はハンドルから離さないようにしなければならない。これらの条件が整っていれば、高速道路の出口をナビゲートしたり、別の高速道路への合流をアシストしたりすることもできる。

ALCは自動運転用語でSAEレベル2に分類され、ステアリングとペダル操作を車両に任せていても、ドライバーがコントロールしているとみなされる。レベル2でよく知られている例としては、アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)や自動緊急ブレーキがある。

1段階上のレベル3は、ドライバーが直接コントロールするのではなく、特定の条件下で車両が運転を担うものと定義されているが、レベル2との間には大きな段差があるため、ここ数年、自動車業界では「レベル2プラス」という言葉を作り出しており、メルセデスのALCはこれに該当する。

多車線道路での車線変更および追い越しは、ステアリング、ブレーキ、アクセル操作をある程度自動化したLKAや従来のクルーズコントロールから大きくステップアップしたものだ。しかし同時に、完全なハンズフリー制御までは行っていない。

車線変更支援は、まったくもって新しい機能というわけではない。メルセデスと同様に、テスラも車線変更支援機能を搭載しており、JLR(ジャガーランドローバー)は2016年に「ドライバー支援による追い越し」操作のプロトタイプを開発している。

自動運転に懐疑的な人々は、その技術の発展状況を見て安心するかもしれない。ADASの進化によって道路がロボットカーで埋め尽くされるようになるまでの道のりは、当初考えられていたよりもはるかに遠い。

今回、メルセデスがALCを米国の道路ではなく欧州の道路に適合させなければならなかったということが、自動運転技術の開発・導入の難しさを示していると言えよう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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