「失われたレーシングカー」復活 ロータス・タイプ66 約50年前の設計図を基に再現、限定生産へ

公開 : 2023.08.22 06:05

1970年のカンナムレース参戦を目指して設計されたものの計画が頓挫したロータス・タイプ66。現代的な素材と技術を駆使して、当時の図面を基に約50年ぶりに「完成」を迎えました。

約50年ぶりに「完成」

ロータスは8月18日、これまで日の目を見ることのなかった幻のレーシングカー「タイプ66」を蘇らせ、世界初公開した。

タイプ66は、1970年にロータスの創始者であるコリン・チャップマン氏がカンナム・レーシング・シリーズへの参戦を視野に入れて製作を依頼したモデル。ジェフ・フェリス技師によってドローイングモデルとスケールモデルが作られたものの、チャップマン氏はF1に専念していたため、それ以上プロジェクトが進展することはなかった。

ロータス・タイプ66
ロータス・タイプ66    ロータス

もしタイプ66がレースに参戦していたら、おそらく2度のF1チャンピオンに輝いたエマーソン・フィッティパルディ氏がドライブしていただろうと、コリン氏の息子でクラシック・チーム・ロータスのマネージングディレクターを務めるクライブ・チャップマン氏は語っている。

また、F1マシンのタイプ72と設計思想を共有し、エアロダイナミクスを向上させるためにサイドマウントのラジエーターを採用していたかもしれないという。

今回、タイプ66はチャップマン氏から提供された1:4および1:10スケールの図面をもとにデジタルで再現され、ロールバーの追加など、現代の安全基準を満たすように修正された。

押出成形のアルミニウム製シャシーをベースに、カーボンファイバー製ボディを載せている。

多板クラッチ、アンチストールシステム、リバースギアを備えたシーケンシャル・トランスミッションを追加し、ドライバビリティの向上を図った。パワーステアリングとレース用に改良されたアンチロック・ブレーキ(ABS)システムも装備する。

パワートレインとしては、ロータスが「時代の代表」と呼ぶプッシュロッド式V8エンジン(シボレーのクレートエンジンがベースと思われる)を搭載し、最高出力841ps/8800rpm、最大トルク76.0kg-m/7400rpmを目標とする。

1970年のカンナムレースで上位5位までに入賞したレーシングカーは、すべてシボレー製のプッシュロッド式V8を搭載しており、その排気量はさまざまで、最高出力は700~800psと言われている。

タイプ66は、1970年シーズンのカンナムレース全10戦にちなんで10台のみ生産される予定で、価格は「100万ポンド(約1億8500万円)を超える」という。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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