ソリッド・バッテリーも見えてきた 日産「EV36Zero」工場 2026年までに稼働開始

公開 : 2023.10.07 08:55

英国サンダーランドで建設が進む「EV36Zero」工場 2026年までに生産体制を準備 最大35GWhまで供給可能 ソリッド・バッテリーも量産へ

建設が進むサッカー場23面分の巨大工場

英国グレートブリテン島の北東部へ位置する、サンダーランド。日産の巨大な工場があることで、AUTOCARの読者ならご存知かもしれない。

そこには、エンビジョンAESC社とサンダーランド市との共同で、10億ポンド(約1810億円)という巨額が投資されている。その成果となる、電気自動車用のバッテリー生産工場、「EV36Zero」が姿を表し始めた。

日産リーフ(欧州仕様)
日産リーフ(欧州仕様)

日産の関係者によれば、2020年代半ばまでに低コバルトのリチウムイオン・バッテリーの生産が始まるという。段階的に供給量を増やすことが可能で、2030年に英国全土で必要とされる100GWhという容量の内、3分の1以上をまかなえる可能性がある。

「EV36Zero」工場は建設工事の真っ最中だが、第1フェイズの面積だけでも、サッカー場23面分の面積を有する。建物の高さも、20mを軽く超えるらしい。

2026年までに生産体制が整えられる予定にあり、当初の供給量は年間9GWh。これは、日産が2020年代後半にサンダーランド工場で生産を開始する予定にある、アリアの次世代モデルの生産数を充分にカバーできる容量となる見込み。

敷地にはまだ余裕があり、需要に応じて施設は拡大される計画にある。最大で35GWhぶんの容量まで、対応できると見積もられている。

ソリッドステート・バッテリーの量産も

日産は、欧州市場で販売されるすべてのモデルを、バッテリーEVへ切り替える方針を発表している。2030年までに、19車種のバッテリーEVを発売するという。またハイブリッドも含めると、電動化技術を採用するモデルは27車種へ及ぶようだ。

また同社は、ソリッドステート・バッテリー(ASSB)の独自生産も、早期に始めたいとしている。このバッテリーは、既存品と比べてエネルギー密度が2倍で、充電速度は3倍まで高められるとのこと。

駆動用バッテリー生産工場のイメージ
駆動用バッテリー生産工場のイメージ

体積自体も小さく、重さを増やすことなく、より長い航続距離を実現できる。これにより、自由度の高いスタイリングも可能になるという。

同社によれば、2024年にはASSBの試験工場が稼働する予定。2026年までに、本格的な量産プロセスを完成させたいそうだ。また、2028年までにこのバッテリーを搭載した量産モデルを、どこかの市場へ少なくとも1車種提供すると約束している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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