運転すれば喜びの沼 アリエル・アトム 4R 容赦ない速度上昇 タイプR用4気筒で405ps

公開 : 2023.11.05 19:05

運転すれば喜びの沼 驚くほど乗り心地は良い

路面状態の良くない環境で開発されたスポーツカーは、往々にして素晴らしいバランスへ仕上がる。英国で生まれた4Rも、その1台に当てはまる。

古くからのAUTOCARの読者ならご存知かもしれないが、ベースとなったアトム 4は、2019年と2020年の英国ドライバーズカー選手権(BBDC)で優勝している。この4Rは、その能力のバランスを保ったまま、強化されている。

アリエル・アトム 4R(英国仕様)
アリエル・アトム 4R(英国仕様)

サスペンションのダンパーは、オーリンズ社製。フォーミュラカーのようにプッシュロッドで動き、専用の内部バルブが組まれている。

ウイッシュボーンの断面を空力特性へ最適化させつつ、キャンバー角を簡単に調整できる仕様にアップグレードもできる。オプションで。もっとも、パイプフレームが露出したボディであることを考えれば、効果は限定的だろう。

スプリングは、ロード/トラック(サーキット)仕様と、トラック専用の2種類から選べる。試乗車には、前者の柔らかいものが巻かれていた。

かくして、アトム 4Rの運転は喜びの沼。車重が700kgを切るようなモデルは、ケータハムを除いて、この世にほぼ存在しない。引き締まった姿勢制御のために、ハードなスプリングやダンパーは必要ない。

そのお陰で、4Rは乗り心地が驚くほど良い。不快な振動や突き上げ感は皆無に近い。

背中を蹴られるような容赦ない速度上昇

アトム 4では叶えられなかったペースで、4Rは疾走する。ブースト圧を最高のレベル3にし、トラクション・コントロールをオフにすると、恐ろしさを伴うほど速い。フロントノーズの向きも、アクセルペダルの加減で自在といえる。

ステアリングホイールには適度な重さがあり、ダイレクトでコレクト。豊かな感触が、手のひらへ伝わってくる。ペダル類の重み付けも理想的。コーナーではブレーキを引きずりながら姿勢を落ち着かせ、狙ったポイントから正確にダッシュを決められる。

アリエル・アトム 4R(英国仕様)
アリエル・アトム 4R(英国仕様)

シフトアップ時に、加速は瞬間的に鈍る。ギアが繋がると、タービンの悲鳴とともに、即座に容赦ない速度上昇が繰り返される。背中を蹴られるような勢いで。

最高速度は273km/hがうたわれる。だが、180km/h程度でもドライバーは激しい気流へ向き合うことになる。

シーケンシャル6速MTは、シフトダウン時にクラッチペダルを踏む必要はない。だが、あえて左足で押し込み、右足でブリッピングしながらタイミングを図る動作も楽しい。

高性能化された過去のアトムは、数少ないながらも、速さを求める中で喜びが多少犠牲になっていたところがあった。しかし、4Rは違う。何も失うことなく、更なる興奮へ浸ることを可能としている。

アリエル・アトム 4R(英国仕様)のスペック

英国価格:7万7940ポンド(約1411万円)から
全長:3520mm
全幅:1880mm
全高:1122mm
最高速度:273km/h
0-100km/h加速:2.7秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:700kg
パワートレイン:直列4気筒1996cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:405ps
最大トルク:50.9kg-m
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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