ドライバーを惹き込む「特有のDNA」 アルピナD3 S ツーリング 長期テスト(3) 世界最高の1台

公開 : 2023.12.31 09:45

直列6気筒ディーゼルを搭載した高速ワゴンのD3 S 独立時代最後となる現行型 誉れ高いアルピナの実力を長期テストで検証

積算7742km アルプス山脈越えに適したクルマ

世界最先端の電動スーパーカーへ試乗するため、指定された場所へ向かった。半日以上をかけて到着すると、プロジェクトの担当者が、ディーゼルエンジンを積んだアルピナD3 S ツーリングへ興味を持っているのがわかった。

予想外の反応ではない。世間の9割以上の人は、少し雰囲気の違うBMW 3シリーズだと思うかもしれない。しかし残りの1割、筆者のようにマニア的なクルマ好きには、その微妙な違いにこそ意味がある。高性能モデルの開発へ関わる人なら、大概は大好きなはず。

アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

イタリア・トリノの郊外で、ピニンファリーナ・バッティスタの量産仕様へ試乗する機会を頂いた。英国編集部のあるロンドンからだと、アルプス山脈を越える必要がある。

折角だから飛行機ではなく、クルマで向かうことにした。こんな場合、どのモデルが好適だろう。

スケジュールがタイトだから、以前に長期テストで乗っていたアウディeトロンGTは適さなかっただろう。高速道路を速く快適に移動できるものの、380km毎に充電が必要となると、理想より長く時間を消費してしまう。

世界最高のクルマの1台だという確信

最初は、長期テストでお借りしている、ランドローバーレンジローバーが良さそうに思えた。しかし、大型SUVのプラグイン・ハイブリッドということで、大陸縦断には向いていない。駆動用バッテリーの充電が切れると、燃費は9.5km/L程度へ落ちてしまう。

贅沢な車内で快適に移動できるが、長時間の運転を考えると、別の理由もある。ステアリングの反応は、このクラスのSUVとしては優秀とはいえ、ダイレクト感に欠ける。大きなボディと相まって、一体感を得にくい。疲労度が、期待ほど小さくない可能性がある。

アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

そこで目に止まったのが、同僚のマット・プライヤーが喜んで乗っている、D3 S ツーリングだった。ディーゼルターボ・エンジンを載せ、最大トルクは74.2kg-m/1750rpmと極太。燃費は16.0km/L近い。人間工学的にもトップクラスにある。

ボディは適度な大きさで、イタリアの市街地も走りやすいはず。これ以上完璧なクルマは、現在の英国編集部界隈には存在しない。早速、マットへお願いのメールを送った。長期テストの今回のレポートは、わたし、リチャード・レーンが担当となった。

かくして、イタリアへの往復を終えた今では、D3 S ツーリングが現時点で世界最高のクルマの1台だと確信を持っていえる。もしかしたら、ベスト・オブ・ベストかもしれない。仮に、M3のエンジンを搭載したB3が存在したら、そちらが最高かもしれないが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト アルピナD3 S ツーリングの前後関係

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