アルピナD3 S ツーリング 1900kgのワゴンだとは思えない 凄まじく速く扱いやすい 長期テスト(4)

公開 : 2024.01.28 09:45

直列6気筒ディーゼルを搭載した高速ワゴンのD3 S 独立時代最後となる現行型 誉れ高いアルピナの実力を長期テストで検証

積算1万2888km ウェールズの一般道もお手のもの

アルピナD3 S ツーリングは、AUTOCAR英国編集部の人気者。本来の長期テストの担当者はマット・プライヤーだが、残念ながら余り乗る機会は巡ってこないようだ。次々に同僚が予定を入れ、走行距離を1000kmほど伸ばし、満面の笑顔で帰ってくる。

今回もまた、わたし、ジャック・ハリソンがキーを預かった。ご記憶の読者もいらっしゃるかと思うが、前回はリチャード・レーンが遠方への出張を楽しんでいる。滑らかなフランスの高速道路を走り、アルプス山脈を越え、イタリアを目指したようだ。

アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

有能なD3 S ツーリングにとって、そんな長旅は朝飯前。そこで筆者は、傷んだアスファルトが延々と続くグレートブリテン島西部、北ウェールズ地方を目指すことにした。

リチャードは、平滑な高速道路を走って、世界最高の1台だと絶賛した。それでは、舗装の剥がれた穴が点在し、ワダチの深い北ウェールズの一般道で、同じ印象を与えるだろうか。この地域は雨も多い。

何事も、疑ってかかることは大切だ。だが、今回ばかりは無用だったかもしれない。スノードニア国立公園の片側1車線の道も、エランバレーの峠を越える細い道も、完全にお手のもの。終始、流暢にこなしてみせた。

ステアリングホイールには素晴らしいフィードバックが伝わり、極めてラインを辿りやすい。幅員の狭い区間でも、ボディサイズが煩わしく感じることはなし。2023年にフォード・フォーカス STで同じ区間を走ったが、D3 S ツーリングの方が確実に優れていた。

非常に扱いやすいのに、凄まじく速い

ドライバーズシートに座ってから、驚くほど短時間でクルマと親しくなれ、操る自信が生まれる。スポーツ・モードを選ぶと、望ましい条件ではなくても、より速く運転したいと気持ちを刺激する。1900kgも車重がある、ステーションワゴンだとは思えない。

アルピナ独自の改良が加えられた四輪駆動システムにより、トルク分配は知的で緻密。しなやかなサスペンションが、路面の凹凸をくまなく均す。非常に扱いやすいのに、凄まじく速い。

アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

今回のルートには、左の高速コーナーの手前で、途中に大きなコブが浮いたアピンを何度か通過する、絶妙な区間があった。思わず筆者は1度引き返し、2回も走ってしまったが、コーナリングは正確で完璧。凄まじく強力な制動力と加速力にも、唸ってしまった。

しかも、北ウェールズ地方からの帰り道でも、AUTOCARのオフィスまでの通勤も、まったく妥協ないことにも度肝を抜かされた。コンフォート・モードを選んでおけば、高速道路は快適至極だ。

長時間の勤務でイライラしがちな夕刻も、D3 S ツーリングを運転すれば不思議と新鮮な気分へ入れ替わる。往復で800km移動した出張も、過去にないほど快適だった。

これほどの走りを叶えていながら、バンドのドラムセットを軽々と積めるモデルは、果たして他に存在するのだろうか。なんて素晴らしいクルマなのだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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