【量産車へ展開するEVシステム】GKNジープ・レネゲードeAWD プロトタイプに試乗

公開 : 2020.03.06 10:20

最小限の出費で、完全なEVへ生まれ変わることができることを証明する、GKN社が生み出したジープ・レネゲードeAWDのプロトタイプ。英国のエンジニアリング企業が生み出したテスト車両を、氷上コースで確かめました。

他モデルに展開可能な標準化システム

text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
技術的な見本車両の意味合いが強い、GKNジープレネゲードeAWD BEVプロトタイプ。大手サプライヤーが、既存のモデルをベースに生み出した純EVだ。多くの自動車メーカーが、純EVで利益を生み出すことに苦労している中にあって、注目の1例といえる。

英国のエンジニアリング企業であるGKN社は、コンパクトSUVのジープ・レネゲードをベースに、ドライブトレインを総入れ替え。高額な融資を受けずに、EVを具現化できる実例といっていい。

GKNジープ・レネゲードeAWD BEVプロトタイプ
GKNジープ・レネゲードeAWD BEVプロトタイプ

GKNレネゲードは、フロントタイヤによるトルクベクタリング機能を含む、4輪駆動の電動パワートレインとトランスミッションを搭載する。システムとして標準化され、そのまま既存のクルマへ搭載可能なシステムだ。

モーターは前後に2基あり、最高出力は総合で264psとなる。2つあるバッテリーパックもGKN製で、14kWhと24kWhの容量を合わせて38kWh。車体フロア部分にレイアウトされている。トランスミッションもGKN社が製造する。

今回のレネゲード・ベースのプロトタイプは2イン1と呼ばれるシステムで、パワーインバーターは前後個別に搭載。さらに高出力を生み出す、3イン1と呼ばれるシステムとインバーターの組み合わせも、標準化システムとして用意されている。

このGKNレネゲード・プロトタイプでは、フロントにはは永久磁石タイプのモーターを採用。コストに優れ、多くの自動車メーカーが採用するモーターといえる。リアにはインダクション(誘導)モーターを採用している。

GKN社独自の駆動制御システム

注目なのが、eツインスターと呼ばれる、GKN社が開発した駆動制御システム。クラッチを利用して、トルクの流れを左右フロントタイヤ間で個別に制御し、安全性を高めるとともに、楽しいドライビング体験を生んでいる。

技術的には、レンジローバー・イヴォークやフォード・フォーカスRSなどのものと得られる結果は同じ。だがGKN社製の場合、電動モーターと2速ATを組み合わせて実現している点がポイント。BMW i8に採用された、トランスミッションの開発にも関わっているという。

GKNジープ・レネゲードeAWD BEVプロトタイプ
GKNジープ・レネゲードeAWD BEVプロトタイプ

GKN社によれば、2速ATの方が、1速のシングルスピードよりも加速と最高速の優れたバランスが得られるとのこと。効率の高い回転数を中心にモーターを動かせるため、航続距離も伸ばせる。

ただし、シングルスピードのトランスミッションの方がEVでは主要なシステムになると予測されている。このGKNレネゲードでも、リアに搭載されるトランスミッションは1速だ。

eツインスターで最も大きな特徴となるのが、モーターのトルク制御がとても繊細に行えること。減速時やコースティング時はエネルギーの回収を行うだけでなく、操縦性を高めるために前輪へトルクを分配する制御も行える。

リアに搭載されるトランスミッションは、一般的なオープンデフ。トルクは左右リアタイヤへ半々で分配され、個別の制御機能は備わらない。リアタイヤの駆動系は、2020年末に発売されるレネゲードのプラグイン・ハイブリッド版と似たシステムといえるだろう。

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